デュシェンヌ型筋ジストロフィーマウスに対する細胞移植治療効果を最大化し得るトレーニング条件の至適化

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p>デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)は、ジストロフィン蛋白(Dys)の欠損により、筋の壊死と再生が繰 り返され、筋萎縮・筋力低下を引き起こす疾患である。現在、新規治療法確立を目指した様々な研究が進められているが、 我々は「細胞移植治療」に着目し研究を進めている。これは、 DMDの骨格筋組織にDys発現が正常な骨格筋前駆細胞を移植することで、DMD筋にDysを回復させるという戦略に基づいている。すでに当研究室では、動物実験にて当該戦略の実現に成功し (Zhao et al., 2020)、さらに、細胞移植前にその対象筋へ等尺性収縮トレーニング (Tr)を負荷すると、移植細胞の生着率が向上し、Dys陽性線維数が増大することを示唆する実験結果も得られている。また、Dys陽性線維数の増大に伴い、運動機能が改善するという報告もある (Godfrey et al., 2015)。そこで本研究では、1)Tr負荷時期、2) Tr負荷量 (強度・頻度)の2点を至適化し、移植細胞の生着効率の最大化を目指すことを目的とした。 </p> <p>【方法】</p> <p>1)Tr負荷時期の検討:5-6週齢のDMDマウスに対し、細胞移植の1 ・2 ・4日前にそれぞれTrを負荷する3群と、Tr非 実施群の計4群を設定した。Trは、麻酔下のマウスの下腿後面に経皮的に電気刺激を与えて強制的に等尺性収縮を負荷するシステムを用いた。負荷量については、足関節底屈トルク最大値の40%の力を発揮するように調整した電気刺激を50回繰り返すものとした。細胞移植2週間後に筋組織を回収して組織学解析を実施し、Dys陽性線維数を計測した。統計解析は、1元配置分散分析とTukey検定を用いた多重比較を行った。 2)Tr負荷量 (強度・頻度)の検討:5-6週齢のDMDマウスに対し、最大値40%の収縮を50回 (40%×50 Tr群)、最大値での収縮を 20回 (100%×20 Tr群)、最大値10%の収縮を200回 (10%× 200 Tr群)負荷する3群と、Tr非実施群の計4群を設定した。Tr 負荷時期は細胞移植の1日前とし、解析方法は1)と同様とした。 </p> <p>【結果】</p> <p>1)Dys陽性線維数は、1日前Tr群において最も多く、その他の3群とのペアのそれぞれで有意差が認められた。 2)Dys陽性線維数は、40%×50 Tr群で最も多かった。40%× 50 Tr群と100%×20 Tr群、40%×50 Tr群とTr非実施群との間で有意差が認められた。 </p> <p>【考察】</p> <p>移植1日前に40%×50回の条件でTrを負荷した際、 Dys陽性線維数が最も増大することが示された。また、Tr 2日後以降に移植した場合には、Tr非実施群と同等数であり増大効果は見られなかったため、Trによる移植効率促進効果は一過性の現象であることが示された。本研究では、DMDマウスへの細胞移植治療効果を最大化し得るTr条件の至適化に成功した。それにより運動療法の有効性が証明されたが、移植効率促進のメカニズムについては未だ未解明である。そこで、今後はメカニズムの解明を進めることで、DMDに対する新規治療法として、より安全で有効な細胞移植治療の確立を目指す。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本研究はCiRA動物実験委員会の承認(23-196)を受け実施した。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 79-79, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793965440
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_79
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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