啼泣や反り返りにより座位保持が困難であった FOXG1症候群の一例に対する理学療法経過

DOI
  • 栗谷 彩
    三重県立子ども心身発達医療センター リハビリテーション科
  • 古川 敦
    三重県立子ども心身発達医療センター リハビリテーション科
  • 花房 伸子
    三重県立子ども心身発達医療センター リハビリテーション科
  • 辻 紫帆里
    三重県立子ども心身発達医療センター リハビリテーション科
  • 西村 淑子
    三重県立子ども心身発達医療センター 整形外科

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> FOXG1症候群は非典型的レット症候群の先天型で、重度の発達遅滞、筋緊張異常、てんかん、睡眠障害、突然の啼泣、摂食嚥下障害等を呈する希少疾患であり、理学療法(以下PT)の報告はほとんどない。今回、啼泣や反り返りにより生活での座位保持が困難であったFOXG1症候群の一例に対してPTを行い、認定こども園での活動参加や母の不安軽減に繋げられたため、入園前後の経過に着目して報告する。 </p> <p>【症例紹介、方法】</p> <p> 6歳女児、横地分類A1。在胎41週6日、体重3742gで出生。4か月で定頚なく反り返りあり、小頭症やMRIで脳梁の低形成・後方部分欠損を指摘。7か月で座位困難で口腔過敏あり、11か月で定頚なく体幹低緊張、上下肢の不随意運動を認め、PT・摂食機能療法開始。1歳2か月でてんかん、3歳4か月でFOXG1症候群と診断。PT開始から4歳で入園し就学に至るまでの経過を診療録から検証した。 </p> <p>【経過】</p> <p> PTは外来に加え、1歳8か月から家族支援や発達促進を目的に定期的な親子入院にて行った。腹臥位で頭部挙上や上肢を前方についた座位が数秒可能となったが、言語表出はなく啼泣や反り返りがあった。3歳7か月、睡眠障害や日中の啼泣や反り返りが強く家庭では食事も含め1日中抱っこやおんぶが必要となった。母の負担軽減・他児との交流を目的に園への入園希望があったが、園で座って生活できるか母の不安があった。そこで、園で連続20-30分座位で過ごせるよう、啼泣せず座位で過ごすための評価や座位練習、環境調整を目的に、入園までの5か月間、外来及び入院で介入を行った。 大きな音や環境変化、不眠があると啼泣しやすく、個室など静かな環境で入院日数や前日の睡眠状況を考慮し介入内容を調整した。座位では不随意運動をきっかけに反り返り股関節屈曲困難となること、不快の表出が伝わらないことで啼泣し反り返りやすかった。広い支持基底面で体幹屈曲や股関節90°以上の屈曲を維持するよう後方から介助座位を行い、表情や声の変化を注意深く観察し介助量を調整すると啼泣なく過ごせた。家庭でも介助座位を取り入れると反り返っても自分で股関節屈曲できることが増え、母との関わり、入院中の保育や病棟預かりなど 1日の多くの生活場面で連続15-30分座位で過ごせるようになった。4歳0か月には座面角度やクッション、ティルト角度を調整した座位保持装置に30分座り食事も可能となった。入園前に園の職員にも環境設定や介助座位の方法を情報共有した。4歳1か月から入園し座位保持装置上での食事や座位で他児との交流を行うことができ、さらにSRC歩行器歩行やプロンボード立位も園に導入できた。6歳1か月には入園前より意思表出や環境適応がしやすくなり、母の不安は軽減した。 </p> <p>【考察】</p> <p> 本症例は重度の発達遅滞を呈し啼泣や反り返りが強く座位に難 渋したが、環境設定や睡眠状況、非言語的表出などを多角的に評価した関わりが重要であった。また、多職種や家族と連携し、生活で股関節屈曲を維持できる介助座位を持続して行うことで座位保持装置上の座位も安定し、園での活動参加や母の不安軽減に繋がったと考える。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本報告はヘルシンキ宣言に基づき、当センターの倫理委員会で承認を得た上、家族に症例報告の趣旨および倫理的配慮について説明し、書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 85-85, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793968000
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_85
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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