小児地域リハビリテーションの実現に向けた子ども食堂の取り組み

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p> <p> 小児整形外科領域でのリハビリテーションでは、子どもの発達や運動器の改善に努めるのみならず、患者家族の様々な困りごとに対して、必要に応じて子どもとの遊び方や課題設定などの家族指導を行うことが必要となる。昨今では情報リテラシーの問題があり、育児の情報はインターネット上では乱雑であり、専門家による確かな情報から経験談まで取捨選択が難しい。そのことによって育児に対する不安を増加させ、親子間の関係性構築の障害になっている例もみられる。当院では上記の問題に対して、育児の困りごとを相談しやすい環境を提供するために子ども食堂キッチンこんを開始した。これまでに4回実施した内容やアンケートで得られた当事者たちの意見をまとめて以下に報告する。 </p> <p>【方法】</p> <p> スタッフ構成は医師、看護師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、公認心理師、教師、地域の子ども食堂や学習支援運営者など専門職をボランティアで配置した。対象年齢や障がいの有無による制限はつけていない。実施回によって子ども食堂と他のイベントを並行して実施した。 募集方法は、1、2回目は希望者へのチラシの配布とSNSでの告 知をした。3、4回目は同様の方法と予約制をとり、定員を10家族とした。実施内容は、参加者同士の交流、食事、離乳食相談、発達や育児相談、イベントを実施した。参加者の滞在時間は2 時間30分~3時間である。参加費は材料費のみ徴収している。これまでに実施したイベントは、室内遊具体験イベント、 離乳食や食形態相談会、ベビーバルシューレ体験会を実施した。すべての会において専門職へ声掛けがしやすいようにパラレル な場を設定している。 </p> <p>【実施内容、結果】</p> <p> 参加養育者年齢は平均35.17歳、こどもの年齢は平均2.39歳。 滞在時間平均は2時間45分。参加者の人数は1、2回は平均22人、 3、4回は平均15人。参加者の構成は、1家族のみ父と母、児で参加、その他は母と児で参加していた。アンケートでは自記式 質問紙を作成して実施。参加者の満足度は高く、再訪者は 7人。参加している養育者は食事やその発達、自身の子の心配な部分 の発達についてアセスメントを求めている傾向がある。発達変化に合わせた遊び方や課題設定の情報を欲している者が多い。 </p> <p>【まとめ】</p> <p> 育児の諸問題に対して相談しやすい場を作るために専門職の子ども食堂を開始した。養育者は平均35.17歳、子どもは平均 2.39歳、参加者の人数は1、2回は平均22人、3、4回は平均15人であった。参加者は子どもの発達や育児をめぐる困りごとを抱えている者が多く、専門職へ直接相談ができるキッチンこんの満足度は高い。本取り組みにより育児の不安を軽減することにつながり、養育者の養育モデルの再考や親子間の関係性構築に促進的に働くことが考えられる。また、小児リハビリテーションにおいて養育者の育児不安を軽減することは意義があり、本取り組みは一助になることが示唆される。 </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>本調査への参加は自由意志での参加であり、参加しない場合でも不利益を受けないこと、 参加後もいつでも撤回でき、その場合にも不利益を受けないことを保障し、口頭での説明、書面での同意を得られた方のみ参加者とした。 個人情報は対象者が特定されることはないこと、厳重に保護することを伝える。調査用紙は無記名で個人が特定できないようにコード化して分析した。 さらに、参加中に体調不良となった場合には直ちに参加を中止し、適切な処置を受けられることも伝えた。</p>

収録刊行物

  • 小児理学療法学

    小児理学療法学 2 (Supplement_1), 88-88, 2024-03-31

    一般社団法人 日本小児理学療法学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581148793971584
  • DOI
    10.60187/jjppt.2.supplement_1_88
  • ISSN
    27586456
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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