今日から始めるオーラルフレイル予防

DOI
  • 白部 麻樹
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 渡邊 裕
    北海道大学 大学院歯学研究院
  • 平野 浩彦
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>オーラルフレイル (OF)は、口腔機能の些細な低下を指す概念であり、フレイルとの関連が先行研究により明らかとなっている。OFを効果的に管理することで、身体的 フレイルや要介護を予防・改善できる可能性があるが、これまでにOFに対する具体的な介入方法は示されていない。そこで、 OF予防プログラム (以下、プログラム)を新たに開発し、効果検証を目的に無作為化比較対照試験を実施したので報告する。 </p><p>【方法】</p><p>K県内107歯科医療機関で65歳以上高齢者3,296名を 対象に実態調査を実施し、OFに該当した219名を無作為に介入群 (男性14名、女性37名、78.6±5.8歳)、対照群 (男性7名、女性25名、78.0±6.8歳)に分類した。介入群に対してプログラムを12週間、歯科診療所にて実施し、その効果を検討した。調査項目は、性、年齢、体重、Body Mass Index (BMI)、オーラルディアドコキネシス (ODK)、舌圧、反復唾液嚥下テスト (RSST)、咀嚼機能 (グルコセンサー (GC社製)、咀嚼チェックガム (ロッテ社製))とした。また、口腔機能改善を目的としたトレーニングは準備体操、開口訓練、舌圧訓練、発音訓練、咀嚼訓練の5項目から構成し、対象者が自宅にて毎日行うものとした。介入期間中、介入群に対して定期的に、トレーニングの実施状況の確認等のモニタリングを行った。さらに介入終了から12週間を追跡期間とし、対象者にトレーニングを継続して実施してもらい、その継続効果を検討した。 </p><p>【結果】</p><p>介入前の対象者のOFの該当率 (健常、プレOF、OF)は、介入群 (0.0%、23.5%、76.5%)、対照群 (0.0%、28.1%、 71.9%)であった。12週間後にOFが軽減された者は、介入後では22.0%であった。介入前後の比較の結果、介入群では体重、 BMI、ODK、舌圧、RSST、咀嚼チェックガムが有意に改善した (Wilcoxon-test、p<0.01)。また継続効果が認められたものは、 ODK、RSST、グルコセンサー、咀嚼チェックガムであった (Bonferroni、p<0.01)。 </p><p>【考察】</p><p>プログラムの実施により、対象者のOFを軽減できた。また、介入期間終了後に自主的にトレーニングを継続した対象者は、複数の項目において、さらなる改善が認められた。歯科専門職によるモニタリングを定期的に実施し、自主的にトレーニングを継続して実施できるようサポートすることで、その効果は持続する可能性が示された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、日本歯科大学生命歯学部倫理審査委員会の承認を得て実施した (NDU-T2017-10)。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ