1次および2次骨折予防に向けたベルト電極式骨格筋電気刺激(B-SES)による新規アプローチの提案

DOI
  • 坪内 優太
    令和健康科学大学 リハビリテーション学部理学療法学科 大分大学 医学部整形外科

抄録

<p>【目的】</p><p> 筋骨格系老化の代表的な病態として骨粗鬆症があげられ,それに伴い生じる脆弱性骨折と共にその対策は急務である.我々はこれらに対するアプローチとしてベルト電極式骨格筋電気刺激 (B-SES) に着目した.ベルト全体が電極となり,刺激時の疼痛を生じにくく,下肢全体を深部まで刺激可能であることから,骨格筋への刺激効率が高い.我々はB-SESによる骨への電気刺激による作用と骨格筋収縮を介した骨へ作用が,骨粗鬆症予防および治療,さらには骨折治癒の促進に応用できるのではないかと考えた. 本研究ではラット大腿骨骨折モデルに対してB-SESを実施し,骨微細構造と骨折治癒過程に与える影響を検討することを目的としている. </p><p>【方法】</p><p> 8週齢雄SDラット18匹に対して大腿骨骨幹部を横骨折した後,骨接合術を施行した骨折モデルを作成し,Control群とB-SES群に振り分けた.B-SES群には骨折直後よりB-SES (ホーマーイオン研究所) を用いて電気刺激を実施した.ベルト電極は大腿近位部と下腿遠位部に装着し,プロトコールはHondaらの方法を参考に実施している. 骨折後4週時に屠殺し,大腿骨と脛骨を摘出した.大腿骨を用い,軟X線画像による骨癒合評価およびToluidine blue染色による病理組織学的解析を実施した.また,大腿骨と脛骨に対しμ CTによる骨形態計測を実施し,骨微細構造の観察を行った.さらにRT-PCRにて骨膜および骨格筋での骨形成関連遺伝子の発現量を観察した. 統計解析にはGraph Pad Prism ver.9.3を使用し,対応のないt検定を用いて各群間の比較を実施した. </p><p>【結果】</p><p> μCTによる脛骨の骨形態計測ではB-SES群の海綿骨量と骨梁幅の増加を認めた.大腿骨の骨折部周辺では,仮骨量と骨梁幅,骨梁数が高値を示し,病理組織学的検討でも同様の結果を認めた.軟X線画像による骨癒合評価ではB-SES群で高値を認めた.さらにRT-PCRでは,B-SES群における骨膜および骨格筋での骨形成関連遺伝子発現量の変化が確認された. </p><p>【考察】</p><p> 今回の実験結果は,電気刺激による骨への直接的作用と,骨格筋収縮を介した間接的作用の2つの経路によるものと仮定している.骨格筋収縮に伴うメカニカルストレスやマイオカインの作用が骨癒合を促進させる一助になったと考えている.本研究より得られたデータは,B-SESが骨粗鬆症や脆弱性骨折に対する有効なアプローチである可能性を示唆しており,1次および2次骨折予防への応用が期待される. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>動物の愛護及び管理に関する法律を遵守し,学内規程の「大分大学医学部動物実験指針」に基づき,動物実験計画書を動物実験委員会に提出し,同委員会の承認を得て適正な動物実験等の方法を選択して実施した (承認番号:第 222402号).</p>

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