高齢者における身体機能と口腔機能~足趾力と口腔機能の関係~

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 人生100年時代を迎え、健康寿命の延伸は我が国の重要な課題であるが、現状では加齢により要介護認定者数は大きく上昇している。介護が必要になった主な原因の1つに転倒があり、転倒予防のためには単純な筋力トレーニングだけではなく、筋肉と脳を連動させる足趾力やバランス力が重要であるとの報告がされている。一方、高齢者の口腔機能の低下は、低栄養、フレイル、サルコペニアのリスクとされ、口腔機能の維持・増進が求められている。我々は、高齢者の身体機能と口腔機能の関連性について明らかにするため、今回は転倒に大きく影響する足趾力と口腔機能の関係について検討した。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は、2018年、2019年にK市で開催された高齢者イベントに参加した125名と2019年、2022年にK大学で開催された健康イベントに参加した156名の計281名 (男性94名、女性187名:65-93歳:平均年齢74.8±5.9歳)である。口腔機能は最大舌圧、残存歯数、オーラルディアドコキネシス/pa/、/ta/、 /ka/、舌左右運動の速さを測定し、足趾力は足趾筋力測定器Ⅱ (竹井機器工業社製:TKK3365b)を用いて、足趾全屈曲による握る動きを左右測定した。加えて、最大握力と、開眼片足立ちについても測定した。足趾力と身体機能ならびに口腔機能との関係については、Spearman相関分析を用いた。統計処理には SPSS Ver26を使用し、統計結果の有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 年齢と今回測定した身体機能ならびに口腔機能すべての項目で有意な相関が認められ、加齢により、すべての機能の測定数値が低下していた。足趾力と身体機能では、最大握力と開眼片足立ちで正の相関が認められた。足趾力と関連が認められた口腔機能は、最大舌圧、舌左右運動、オーラルディアドコキネシス /pa/,/ta/であり、最大舌圧とオーラルディアドコキネシスは正の相関を、舌左右運動では負の相関が認められた。 </p><p>【結論】</p><p> 加齢とともに、身体機能や口腔機能の低下に注視し、早期から低下予防に関する対策の必要性が示された。また、足趾力と舌の動き、強さならびに口唇や舌の巧緻性との関係が認められたことから、それら機能低下の兆候から足趾力低下の早期発見の可能性や、口唇、舌の機能向上トレーニングにより、足趾力の向上に繋がる可能性が示された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は神戸常盤大学短期大学部研究倫理委員会の承認を得て行われた (承認番号:神常短研倫第18-16号、 19-06号、22-1号)。対象者には事前に書面を用いて口頭で研究の説明を行い、書面にて同意を得た。</p>

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