労働者に対する腰痛予防事業の活動報告

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  • 澤野 純平
    医療法人社団 いずみ会 北星病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 腰痛は休業4日以上を要する全業務上疾病のうち約6割を占め,腰痛を有しながらの就労継続者は多い.腰痛は労働生産性や生活の質,失職,休職にも影響を及ぼし,労働における腰痛予防への対策が急務である.労働者における腰痛予防の目的は初発,慢性化 ・悪化,再発の3つの予防が挙げられ,腰痛予防体操の提案が重要である.今回,腰痛を有する男性労働者に対し,腰痛予防体操を提案・ 実施により若干の効果を認められたため,ここに報告する. </p><p>【方法】</p><p> 対象は製造業に従事している腰痛を有する男性労働者20名.(平均年齢46.3歳)体操内容は立位姿勢改善を目的とした3種類の体操,1.立位体幹伸展運動,2.股関節伸展ストレッチ,3.腰部安定化運動(バードドッグ)とした.体操の実施は,就業前・休憩時・就業後の3回とした.実施率は対象者にカレンダーを配布し,体操3種類 3回◎,体操1種類以上3回○,体操1回以上3回未満△,非実施 ×とチェックしてもらい算出.評価項目は腰痛の程度 (以下NRS),体表からの立位体幹前傾角 (Global Sagital Axis:以下GSA),プレゼンティーイズム (Single-Item Presenteeism Question:以下SPQ), ODI, 心理指標 (以下K6),FFDを介入前後 (2ヶ月後)に測定.介入前後の各項目の比較は正規性を確認後,Wilcoxonの符号順位検定を用いた.統計学的有意水準は5%とした. </p><p>【結果】</p><p> 介入前後比較の結果 (各項目中央値を記載)NRS (4.5→3 p<0.0001 r=0.89),GSA (163.5°→165.0° p<0.0001 r=0.79),SPQ (30%→20% p<0.0001 r=0.79),ODI (15%→12% p<0.0001 r=0.90),FFD (-10.5cm→-4.5cm p<0.0001 r=0.88)に おいて有意な改善が認められた.一方で,K6 (3点→3点)において有意な改善は認められなかった.体操の実施率については,2ヶ月間毎日◎の者は2名 (10%),○以上が2/3以上の者は9名 (45%),○以上が1/3以下の者は11名 (55%)であった. </p><p>【考察】</p><p> 今回,腰痛を有する男性労働者に対し,立位姿勢改善を目的とした体操を実施した.介入の結果,腰痛の程度や立位体幹前傾角,プレゼンティーイズム,腰痛による日常生活制限,柔軟性が有意に改善した.一方で心理指標に変化はなかった.腰痛や生産性の悪化予防としては体操効果があったと考えられるが,実施率について今後工夫が必要である. </p><p>【結論】</p><p> 労働者における立位姿勢改善を目的とした腰痛予防体操は,腰痛の程度や生産性に有効である可能性が示唆された. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施された.またヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に配慮し,対象者に口頭で説明し同意を得た.</p>

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