中年層の女性における骨密度と体組成および運動機能の関連

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>日本における骨粗鬆症や大腿骨近位部骨折の発生数は年々増加している。とくに女性ではホルモンバランスの変化に伴い骨粗鬆症を発生することが多く、男性の4倍の大腿骨頚部骨折が発生すると報告されている。そのため、骨粗鬆症や転倒/骨折の予防が重要な課題となっているが、その予防年齢ともいえる中年層女性を対象にした骨密度や運動機能の研究は少ない。そこで本研究では、中年層女性を対象に、骨密度と運動機能・身体組成の関連を検討することとした。 </p><p>【方法】</p><p>対象は2019年6月から2023年3月の間に当院人間ドックを受診し、ロコモ度テストを実施した45歳~64歳までの女性 104名とした。骨密度検査 (DEXA法)から得られた大腿骨頸部の YAM値を指標に、80%以上を正常群、70~79%を骨減少群、 69%以下を骨粗鬆症群とした3群に分類した。調査項目は年齢、身長、体重、BMI、体脂肪率、肥満度、疼痛/運動習慣の有無、ロコモ度テスト(2ステップテスト・立ち上がりテスト)、筋力 (膝伸展・握力)、歩幅、歩行速度、骨格筋量指数 (以下、 SMI)、血液検査 (アルブミン、総蛋白、カルシウム)とした。統計学的処理は正規性の検定を行い、結果に従いTukey HSD検定、Kruskal- wallis検定、X2検定にて3群間の変数を比較した。統計はSPSS20を用い有意水準を5%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p>正常群68名(65%)、骨減少群25名 (24%)、骨粗鬆症群 11名 (11%)であった。年齢は骨粗鬆症群(59.5±3.6)と骨減少群 (57.5±4.8)が正常群 (53.5±5.1)より有意に高齢であった(P<0.01)。身長と体重は骨粗鬆症群(身長152.6±4.6・体重50.0±11.0)が正常群(身長159.2±5・体重58.5±10.2)より有意に低値であった (P<0.05)。SMIは骨粗鬆症群(5.6±0.7)が正常群(6.3±0.7)より有意に低値であった(P<0.01)。その他、運動機能検査や運動習慣、体脂肪率や血液検査では各群で有意な差は認めなかった。 </p><p>【考察】</p><p>骨粗鬆症群のSMIは正常群に比べ有意に低値であり、平均値はサルコペニアの診断基準に該当する結果となってい る。一方、ロコモ度テストをはじめ各種運動機能検査やその他評価項目では群間に差を認めず、全群において握力や歩行速度はサルコペニアの診断基準には該当しなかった。以上から、中年層女性の骨粗鬆症群では既にプレサルコペニアの状態であることが示された。また骨減少群と骨粗鬆症群を合わせると全体の3割を超える結果であり、中年層女性では運動機能が標準値でも、骨密度や体組成の検査を推奨し、予防対策を早期にはじめる必要がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は倉敷中央病院臨床研究審査委員会にお ける【承認番号4116号】を取得している。自施設既存情報を用いる研究であるため、倫理指針に従って当施設ホームページにて情報公開し、拒否機会を付与している。得られたデータは本研究の目的以外には使用せず、研究の結果を公表する際も被験者を特定できる情報は使用しない。</p>

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