客観的に評価した座位行動・身体活動時間の置き換えと膝痛高齢者の健康関連QOLの関連

DOI
  • 朴 忠培
    東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室 東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室
  • 石井 香織
    早稲田大学 スポーツ科学学術院
  • 柴田 愛
    筑波大学 体育系
  • 岡 浩一朗
    早稲田大学 スポーツ科学学術院
  • 河合 恒
    東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室
  • 江尻 愛美
    東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室
  • 今村 慶吾
    東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室
  • 大渕 修一
    東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者健康増進事業支援室

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>膝痛と座位行動は高齢者の健康関連 Quality of life (以下、HRQOL)の低下と関連することが報告さ れている。身体活動は高齢者の良好なHRQOLと関連があることが知られているが、膝痛高齢者は痛みのため、覚醒時間の大部分を座位行動に費やしていることがわかっている。 昨今、 isotemporal substitution (以下、IS)モデルを用いた行動間の置き換えと健康指標との関連を推定する研究が増えているものの、膝痛高齢者を対象にその効果を検討した研究は十分に行われていない。そこで本研究では、ISモデルを用いて膝痛高齢者を対象に、座位行動を身体活動に置き換えとHRQOLとの関連について検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象者はA市およびB市に在住し、3ヶ月以上の膝痛を有する65歳以上の高齢者 (平均±標準偏差:73.0±5.0歳)120名であった。座位行動および身体活動については、3軸活動量計 (オムロンヘルスケア社製:Active style Pro HJA-350IT)を用いて測定した。HRQOLはMedical Outcomes Short Form 8 items Health Survey (以下、SF-8)によって、精神的健康度得点および身体的健康度得点を評価した。共変量を年齢、性別、婚姻状況、教育歴、喫煙状況、鎮痛剤使用、BMI、膝痛の程度とし、10分の座位行動を低強度または中高強度の身体活動へ置き換えた場合のHRQOLとの関連をISモデルによる重回帰分析にて検討した。</p><p>【結果】</p><p>分析対象者は94名であった。SF-8精神的健康度得点および身体的健康度得点は、それぞれ49.6±6.6点、43.4±6.3点であった。Single-activityモデルでは、座位行動は精神的健 康度得点と負の関連 (β=-0.33、95%CI:-1.06,-0.16)、低強度身体活動 (β=0.25、95%CI:0.03,1.08)および中高強度身体活動 (β=0.29、95%CI:0.39,3.08)は精神的健康度得点と正の関連を認めた。ISモデルにおいて、座位行動を中高強度身体活動に置き換えた場合、精神的健康度得点と有意な正の関連が認められた (β=0.23、95%CI:0.03,2.83)。一方で、座位行動を低強度身体活動に置き換えた場合および身体的健康度得点においては有意な関連が認められなかった。</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果より、10分の座位行動を等時間の中高強度の身体活動に置き換えることは膝痛高齢者の精神的 HRQOLの改善に寄与できる可能性が示唆されたが、座位行動の中高強度身体活動への置き換えが可能かについては、膝痛の症状や対処を考慮した詳細な検討が今後必要である。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本賢雄は早稲田大学の倫理委員会の承認を得た (2013-271[1])。すべての参加者には研究内容について書面にて説明し、同意を得た。</p>

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