ロコモ健診者における新型コロナウイルス感染症流行前後の身体機能の変化 ~性別毎の3年間の追跡調査~

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>2020年以降新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)流行下における身体活動や健康への影響は,これまでに国内外で数多くの報告がなされている. しかし,縦断データによる運動機能の変化を客観的評価を用いて検証した報告は限定的である.そこで本研究の目的は,COVID-19流行前後のロコモ健診者の体力の推移を把握し,流行下に体力の低下が生じているのかを明らかにすることとする. </p><p>【方法】</p><p>対象は2019年6月から2022年5月に当院人間ドックにてロコモ健診を3年連続で受診した124名 (男性89名女性35名平均61.3±10.8)を解析対象とした.ベースライン期調査は2019年6月から2020年5月とした.調査項目は年齢・身長・体重・ BMI・腹囲・運動習慣の有無・2ステップテスト・握力・膝伸展筋力,四肢骨格筋量指標,大腿骨YAM値とした.統計はまずベースライン時の対象者の特性を調査するために記述統計量を算出した.次に,反復測定分散分析を用い2019年から2022年にかけての各身体機能の推定周辺平均値を算出することでCovid-19による経時的な変化を調査した.また,事後検定はBonferroni法を用い比較した.統計はSPSS20を用い有意水準を5%未満とした. </p><p>【結果】</p><p>ロコモ該当者59名 (47.6%) (内訳:ロコモ度1は41.9 %,ロコモ度2は5.6%)で非該当者65名 (52.4%)であった.運動習慣を有する人の割合がベースライン期が36.3%対し1年後41.1 %2年後47.6%とコロナ禍においても上昇していた.2019 年から 2022 年にかけて有意なクロス水準交互作用が確認された項目は,男性で握力 (低下幅:-0.91,95%CI:-1.79~-0.23)・下肢筋力 (-0.1,-0.2~0)・大腿骨YAM値 (-0.75,-1.41~-0.1),女性で は大腿骨YAM値 (-1.38,-2.74~-0.01)のみ有意に低下していた. </p><p>【考察】</p><p>コロナ禍は外出自粛やテレワークの普及による生活変容で運動不足から健康被害が生じた一方生活習慣が改善した者もおり,本研究対象はコロナ禍前後で運動習慣が減ることなく逆に上昇し体力水準が維持されていた.男性の握力・下肢筋力と男女とも骨密度が有意に低下していた.ロコモ健診による定期的な身体機能の評価が健診者に気づきを与え行動変容を起こすきっかけになったことで,COVID-19流行下における顕著な体力低下を予防できた. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,当院の臨床研究審査委員会の承認 (承認番号:4127号)を受けるとともに,収集した個人情報に関しては,当院の個人情報保護規則を遵守し取り扱った.また,当院所定の様式を用いて,研究の目的と概要,対象患者,研究に使用されるカルテ情報等を文面化したものを倫理指針に従って当院ホームページにて対象者へ情報開示と研究参加の拒否権の提示を行った.</p>

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