腰椎変性疾患術後患者のスポーツ・レクリエーション活動中に腰痛を出現させないための身体機能の基準

DOI
  • 古谷 英孝
    苑田第三病院 リハビリテーション科 苑田会東京脊椎脊髄病センター リハビリテーション科
  • 廣幡 健二
    東京医科歯科大学スポーツ医歯学診療センター リハビリテーション科
  • 見供 翔
    スポーツ庁 健康スポーツ課
  • 藤澤 俊介
    苑田第三病院 リハビリテーション科 苑田会東京脊椎脊髄病センター リハビリテーション科
  • 大坂 祐樹
    苑田第三病院 リハビリテーション科 苑田会東京脊椎脊髄病センター リハビリテーション科
  • 星野 雅洋
    苑田第三病院 整形外科 苑田会東京脊椎脊髄病センター 整形外科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 腰椎変性疾患術後患者のスポーツまたはレクリエーション (スポーツ等)への復帰状況は患者満足度を表す指標のひとつであ る.今回,スポーツ等の活動中に腰痛を出現させないための身体機能の臨床基準を運動強度別に作成することを目的とした. </p><p>【方法】</p><p> 研究デザインは横断研究とした.対象は腰椎変性疾患に対して手術を施行され,定期的にスポーツ等へ参加している者とした.外傷手術を受けたものは除外した.評価項目は1)基本属性 (年 齢,性別,Body Mass Index,術後期間,固定椎間数),2)最大等尺性体幹屈曲筋力に対する伸展筋力の比率 (E/F比),3)30秒椅子立ち上がりテスト (CS30),4)Functional Reach Test (FRT), 5)スポーツ等実施中の腰痛の有無,6)参加しているスポーツ等の種類とした.2)はハンドヘルドダイナモメータを用いて測定した.5)は腰痛を0:全くなし~10:耐えられない,の11段階で評価し,0と答えた群を腰痛無群,それ以外を腰痛有群とした.また,6)から運動強度基準 (METS)より低強度群と中・高強度群に分けた.統計解析は腰痛の有無を基準にROC曲線を用いて2)3)4)の身体機能のカットオフ値を算出し,二値変数に変換した.次に,5)を従属変数,1)および二値変数に変換した2)~4)を独立変数としたロジスティック回帰分析 (ステップワイズ法)を実施した (有意水準5%). </p><p>【結果】</p><p> スポーツ等に参加している173名[女性90名,平均年齢73.0歳,平均術後期間23ヶ月,固定椎間数 (中央値2,範囲0-15)]を分 析対象とした.スポーツ等は,低強度116名 (ウォーキング,健康体操等),中・高強度57名 (卓球,水泳,テニス,ゴルフ等 )であった.腰痛無群は低強度群が44名,中・高強度群が18名 であった.ロジスティック回帰分析の結果,低強度群はE/F比 (カットオフ値,p値,オッズ比:0.9,0.029,2.7),FRT (30㎝, 0.046,2.6)が抽出された (R2=0.14).中・高強度群は,E/F比 (1.2,0.011,7.3),FRT (30㎝,0.020,6.4)が抽出された (R2 =0.35). </p><p>【結論】</p><p> 腰椎変性疾患術後患者が腰痛を出現させずにスポーツ等に参加するための臨床基準として,低強度スポーツ等ではE/F比が0.9以上,FRTが30㎝以上,中・高強度スポーツ等ではE/F比が1.2以上,FRTが30㎝以上,必要であることが示された. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言に則り,研究の目的や方法について説明を十分に行い,同意を得て実施した.</p>

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