介護付きホームにおける転倒に関するコホート研究 ~予測因子の関連性と予防戦略の確立を目指して~

DOI
  • 小川 康弘
    株式会社アズパートナーズ シニア事業部 専門職育成セクション
  • 石川 渚
    株式会社アズパートナーズ シニア事業部 専門職育成セクション
  • 藤山 亮太
    セントラル薬局グループ(株式会社グリーンエイト) 運営管理本部 学術研修部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 高齢者の転倒はQOLを著しく低下させる一要因だが,本邦における高齢者施設での転倒報告は少ないとされる。本研究は当社介護付きホーム (介護付き有料老人ホーム)における転倒の実態を調査し,独立変数との関連性を分析することで,介護施設における転倒リスクの予測・予防戦略の一助となること目的とする。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は2022年5月1日から2023年1月31日までに当社が運営する介護付きホームに全期間入居していた全入居者を取り込み基準とし,臥床状態の常態化により転倒の危険性のない入居者を除外基準とした後向きコホート研究を行った。転倒の定義には Gibsonの定義を採用し転倒実態を調査した。転倒分析では目的変数に転倒の有無,独立変数は研究開始時の年齢,性別,身体機能,認知機能,薬剤 (薬剤数・薬効分類)とし,測定項目をχ2検定,Mann-WhitneyのU検定で比較した。身体機能は Functional Independence Measure運動項目(以下FIM),認知機能は認知症高齢者の日常生活自立度 (以下認知症度)を用いた。薬剤数は多剤併用リスクとの相関性を考慮した定期内服薬・外用薬 (全身作用あり)・注射剤を調査した。また関連性の検証では,先行研究を参考に有意水準の認められた独立変数を二値化しロジスティック回帰分析を行った。 </p><p>【結果】</p><p> 転倒群318名(男性74名,女性244名),非転倒群361名(男性61名,女性300名)であった。χ2検定では85歳以上・男性比率・認知症度Ⅱb以下・FIM59点以下・薬剤数3剤以上のグループにおいて転倒群で有意に高値を示した。ロジスティック回帰分析では,年齢・性別・認知症度,可変効果であるFIM59点以下 (調整後OR 1.86,95%CI 0.29-0.96)・薬剤3剤以上 (調整後OR 1.88,95%CI 0.21-1.06)にそれぞれ有意な関連性が認められ た。 </p><p>【考察】</p><p> 本研究の予測因子は,新野らの介護施設の先行研究 (1996)と比して高齢で男性比率が高く,小島の先行研究 (2012)の薬剤数よりも少なかった。活動性の増加と安全は常にトレードオフの関係にあり,動作が自立する前後の能力を有するときが最も転倒リスクが高い (北村ら2021)とされる。本研究におけるFIMスコア指標は,具体的な能力推定型評価として,予防的なリハビリ戦略策定に繋がるものと考える。また薬剤指標は,効果・副作用の双方の観点から多職種連携による定期的な薬剤再検討の深化に繋がるものと考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分に行い,研究参加への同意に関しては当社ホームページによるオプトアウトを用いた。また株式会社アズパートナーズ倫理審査委員会の承認を得て実施した。 (承認番号:H-002)</p>

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