超高齢大腿骨近位部骨折を呈した患者の病棟内歩行に影響する因子の検討 ~入院時のリハビリ評価に着目して~

DOI
  • 鍛治 宏宣
    小金井リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 塚原 新太郎
    小金井リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 植田 悟史
    小金井リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 山田 亮佳
    小金井リハビリテーション病院 リハビリテーション科

Abstract

<p>【はじめに、目的】</p><p>高齢化社会がすすみ回復期リハビリテーション病院である当院には、85歳以上の超高齢者の大腿骨近位部骨折患者が多く入院している。回復期リハビリテーション病棟では、歩行獲得、自宅退院を目標にリハを行っているが歩行獲得が出来ずに自宅退院が困難なケースも多くある。本調査は、後方視的に入院時のリハ評価より病棟内歩行獲得の予測因子を明らかにし、早期より退院の転帰の決定や退院後の生活や活動に対してのアプローチを行うための一助となることを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p>対象は85歳以上の大腿骨近位部骨折患者で当院に 2022.4.1~2022.9.30までに入院した者で受傷前に独歩、 T-Caneにて歩行をしている58名とした。入院時に荷重制限が あったもの、状態悪化による転院したもの、回復期算定上限日 数を超えたものを除外する。本調査では、退院時に病棟内の移動を監視、修正自立、自立にて歩行が行えたものを歩行獲得群、それ以外のものを非歩行獲得群とした。歩行獲得群と非歩行獲得群の2群間に分類し、発症から回復期リハビリテーション病 棟転院までの日数、過去の骨折歴、入院時の痛みの有無、入院時の歩行の有無、MMSE、mFIM、cFIMを調査し2群間の差を χ2検定、Mann-Whitney U検定にて実施した。また、FIMの cut off値を求めるためROC解析を実施した。統計処理はEZRを用いて、有意水準を1%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p>歩行獲得群31名、非歩行獲得群27名で、入院時の歩行の有無(p>0.01)、mFIM(p>0.01)、cFIM (p>0.01)、 MMSE(p>0.01)にて有意な差がみられた発症から回復期リハビリテーション病棟転院までの日数、過去の骨折歴、入院時の疼痛の有無では有意差はみられなかった。FIMの cut off値は、61点(ROC曲線線下面積0.784、95%信頼区間0.664 - 0.903)であった。 </p><p>【考察】</p><p>本調査の結果より、入院時の歩行やmFIMといった身 体機能とMMSEやcFIMといった認知機能面が日常生活での病棟内の移動が歩行で行えるかに影響している事が明らかになった。また、身体・認知の側面も評価可能なFIMにおいて61点以上で病棟内歩行獲得となる可能性が高いことも示せた。高齢者の移動能力は退院時の転帰を決める際に重要な因子であり、早期より歩行能力の予後予測が可能となることで、入院早期より退院の転帰の決定や退院後の生活や活動に対しての介護保険サービスなどを用いた目標設定が可能となると考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本調査はヘルシンキ宣言に基づいた規定に遵守し、個人が特定できないように匿名化しデータの取り扱いには十分注意した。</p>

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