変形性股関節患者における改訂版Frenchay Activities Indexに影響する要因:横断研究

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 改訂版 Frenchay Activities Index (SR-FAI)は、より高次の日常 生活活動評価尺度であり、手段的日常生活動作 (IADL)の定量的な評価が可能である。SR-FAIは変形性股関節症患者 (Hip OA)における信頼性と妥当性が検証されており臨床的に有用である。 Hip OA患者は、疼痛の発生から手術までに長い待機期間があることが少なくなく、この時期にIADL能力を保持しておくことは重要である。本研究の目的は、SR-FAIに影響する要因を明らかにし、Hip OA患者の保存療法介入の理学療法プログラム立案に寄与することである。 </p><p>【方法】</p><p> 本研究は術前評価が行えたHip OA患者210名を対象とした横断研究である。SR-FAIを目的変数、心身機能である握力、股関節 ・膝関節筋力、股関節・膝関節可動域、5m歩行速度、Timed up and go (TUG) testを説明変数として測定した。基本的属性として性別、年齢、BMI、居住状況、運動習慣を記録し、医学的属性として既往歴、転倒歴を調査した。統計解析として、説明変数間の相関関係を確認した後に、SR-FAIを目的変数、心身機能を説明変数とした重回帰分析を実施した。次に基本的・医学的属性を制御変数としてモデルに強制投入した上で階層的重回帰分析を実施し、有意な心身機能を抽出した。なお、統計解析にはR4.3.0verを使用し、有意水準は5%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p> 対象は男性 27名、女性183名であり、平均年齢は69.2±8.8歳であった。重回帰分析の結果、患側股関節伸展可動域とTUGが有意にSR-FAIを説明した。また、階層的重回帰分析の結果、患側股関節伸展可動域(β=0.16、p=0.028 )とTUG(β=-0.45、 p<0.001)が有意にSR-FAIを説明した。また交絡因子である既往歴 (β=-0.14、p=0.037)も有意であった。得られたモデルの自由度調整済みR二乗は0.252であり、VIF最大値は1.361であった。 </p><p>【考察】</p><p> 先行研究では、5m最大歩行速度がSR-FAIの関連要因として報告されているが、立ち上がりや方向転換等を含むTUGが、より説明するには有用であったと考えられる。またTUGは術前歩行能力を総合的に判断しており、術後の歩行自立までの日数に大きく影響するため、TUGに着目した術前理学療法プログラム立案が必要だと考えられる。またHip OA患者は、疼痛回避のために股関節伸展可動域を減少させた非効率な歩容であることが多い。高次の活動性が求められるSR-FAIは、股関節伸展を伴う効率的な歩容が必要であることが示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は所属施設の倫理委員会によって承認された研究である。対象者は研究の説明を口頭および書面にて受け、書面にて同意した。</p>

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