PEOモデルを用いた介入により介護保険サービスの利用終了に至った事例

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 介護保険サービスでは利用終了時期について課題がある.本症例は,目標設定および課題設定を行うために Person-Environment-Occupation Model of occupational performance (以下PEOモデル)を用いた介入により,目標達成にて介護保険サービスの利用終了に至ったため報告する. </p><p>【症例紹介】</p><p> 80歳代前半の女性.主疾患は変形性膝関節症.既往歴は高血圧症,腰椎椎間板ヘルニア,鼻癌.本症例はサービス利用開始前に週3回程度フィットネスジムに通って友人と水泳を行っていたが,コロナ禍により中止.再開の日まで身体機能の維持を希望し,事業対象者としてX日より当施設を週1回にて利用開始 した. </p><p>【経過】</p><p> 初期評価時の身体機能はSPPB12点,最大6m歩行速度1.07m/秒,片脚立位17.49秒であり,身体機能に問題点はなかった. EQ-5Dは0.68点で,Ivarらの報告によるカットオフ値0.69を下回り,軽度な心理的機能の低下が見られた.長期目標は,フィットネスジムに通い水泳を再開することであったが,身体機能も良好であったため介入方針の決定に難渋した.そこで,目標達成に関する阻害因子を分析するためにPEOモデルを使用.本症例の目標達成の阻害因子として,コロナ禍による活動量の低下によって生じた主観的な機能低下や社会参加機会の減少が要因であると推測された.介入として,主観的な機能低下に対しては運動習慣の定着を目指してチェックシートを用いた自主練習の指導を施行した.また,ご友人とは電話のみの連絡であったため,無理のない範囲で直接会うことを提案した.上記介入により,自主練習の定着および主観的な機能低下の改善を自覚するにつれ,目標達成に必要な能力を具体的に把握しつつ,それらが身についていることを自覚.また,社会参加に対しても前向きな発言が見られた.そこで,利用終了に向けての話し合いを本人と行い,卒業後の自主練習の指導や目標動作における注意点の共有をした.X+〇日にて当施設のサービスの利用終了に至り,身体機能および心理的機能はSPPB12点, 最大6m歩行速度1.67m/秒,EQ-5Dは0.71点であった. </p><p>【考察】</p><p> 身体機能に問題を抱えていないのにもかかわらず目標達成に至っていない症例に対して,PEOモデルを用いた介入が有効であることが示唆された.本症例を通して,介護保険サービスの利用終了には自己効力感の向上に合わせて社会参加機会の獲得や終了後の受け皿が必要であると経験した. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき,本人には報告の趣旨と内容を十分に説明し同意を得た.</p>

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