中山間地域における社会的フレイル予防を目指した多世代交流型の地域実践活動の紹介

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 社会的フレイルは外出や社会的交流の減少を中心としたもので身体的・精神心理的要素に先行して起こり予防の重要性が示されている。しかし、定義や判断基準において未だ十分なコンセンサスが得られていないとされ、十分な検討がなされているとは言えない。今回、NPO法人Ubdobeの介護予防事業へ専門職アドバイザーとして参画し、高齢者と大学生、専門職など多世代で交流する地域実践活動を行ったので報告する。 </p><p>【方法】</p><p> I 介護予防事業の内容 2022年9月~2023年3月に、岡山県総社市にて実施。 対象①:地域在住高齢者3名 (地域包括センターから紹介の高齢者1名・地域で声をかけて参加した高齢者2名)。そこへボランティア募集で集まった近隣大学の学生が高齢者の興味・嗜好に合わせて一緒に活動することで、心身への変化に影響するのかを検証した。大学生が、地域高齢者宅へ実際に訪問し農業体験や、興味のあるテーマでの意見交換会などを行った。 対象②:同市社協と個人からの紹介で2つの地域サロン。大学生に介護予防の講義を行い、学生達で考案した企画を持ってメンバーとの交流を行った。 II 理学療法士の活動 大学生に対して介護予防の講義を行い、社会的フレイルを学んだうえで活動してもらった。また、地域高齢者1名 (80歳代・男性:以下A氏)への訪問に合わせて同行し10月と1月に介護予防事業評価ツールE-SASを用いて評価を実施した。 </p><p>【結果】</p><p> 対象①のA氏は、初回評価より、「ころばない自信」の項目で低下がみられ、身体機能低下の自覚とともに趣味の農業への意欲低下の発言もあった。最終評価では、E-SASの点数に変化なく維持できている結果となり、大学生と交流することで「会いにきてくれる事でやらなきゃと前向きになれる」と発言があった。対象②では、大学生との活動を通して「若い方が入ると雰囲気が変わり高齢者には良い刺激になった。」などの前向きな声が聞かれた。 </p><p>【考察】</p><p> 理学療法士の役割は、介護予防事業における効果検証と、介護 予防の知識・視点を普及することにあると考える。本事業により、地域高齢者の社会的なつながりの維持、意欲・活動性低下の予防、また、サロンでの運営のマンネリ化や継続面といった地域課題解決の一助となる可能性を得た。今回の課題としては、まだ活動例が少なく検討に不十分であった。2023年4月以降も、同地域にて活動を継続し、社会的フレイルに対する効果検証を取組んでいく。 </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 各事業開始時には、研究目的、研究方法の説明及び研究協力の依頼を書面または口頭で行った。また、研究協力は任意であること、拒否によって不利益を被らないこと、個人情報の保護について書面または口頭により説明し、書面にて同意を得た。</p>

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