高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施におけるフレイルの特性と関係性

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 2020年4月より高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施が始まり、フレイル対策が重要視されているが、取り組みの開始時期や方法は自治体によってばらつきがある。フレイルには複数の要因が関与するが、それぞれの要因の該当状況や、各々の要因の関連については不明瞭である。本研究では各フレイルの特性や他のフレイルとの関係性を検討し、今後の対象者の選定やアプローチの一助とすることを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> 2022年にA市で行われたフレイルチェック測定会に参加した 72名 (男性28名、女性44名、平均76.0歳)を対象とした。60名は介護予防事業、12名は保健事業からの参加者であった。フレイルの判定は、運動・栄養・口腔・社会参加・認知・心の6つの側面から行った。測定項目は同居家族の有無、基本チェックリスト (以下KCL)に数項目を加えた質問票、BMI、日本版CHS、 5回立ち上がり時間、指輪っかテスト、オーラルディアドコキネシス、口腔内水分量とした。運動は日本版CHSとKCL、口腔はオーラルディアドコキネシス・口腔内水分量・KCLに4項目 を追加した質問による点数を用い、ロバスト・プレフレイル・フレイルの3段階で判定した、栄養は5項目の質問・指輪っかテスト・BMI、社会参加は同居家族の有無または週1回以上の外出の有無、認知と心はKCLによりロバスト・フレイルの2段階で判定した。各側面での判定の結果を用い、側面間の関連について、Spearmanの順位相関係数により分析を行った。統計解析にはRコマンダーを使用し、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 各側面でフレイルと判定された人数は、運動3名、栄養10名、口腔33名、社会参加50名、認知23名、心23名であった。相関分析では運動-心 (ρ=0.39)、運動-口腔 (ρ=0.31)、口腔-心 (ρ =0.42)、社会参加-口腔 (ρ=0.25)、社会参加-心 (ρ=0.26)において、有意な弱い相関を認めた。 </p><p>【考察】</p><p> 先行研究では、口腔は運動のフレイルと関連があると報告されているが、本研究ではこれに加え、社会参加や心とも相関を認めた。社会参加では独居によりフレイルと判定される場合が多く、孤食や会話の減少などが口腔機能に影響していると推察された。介護予防事業において運動単独で行われがちな教室を、他の要因と組み合わせた積極的な事業の運営が必要と考えられた。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>武蔵台病院倫理委員会の承認を得た。対象者へは書面にて説明と同意を得た。</p>

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