生活習慣病リスクのある就労年代層を対象とした健康行動に基づいたクラスタリングの試み:潜在クラス分析を用いた検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 生活習慣病と健康行動は関連していることが知られており、健 康行動の特徴ごとにグループを形成することができればより特異的な対策を行える。本研究では、潜在クラス分析を用いて、生活習慣病のリスクがある日本の就労年代層における健康行動の組み合わせによるクラスター形成を試みることを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> 2013年4月から2021年7月の間に (株)PREVENTにて収集されたデータを用いた。対象者は、生活習慣病未診断者で、血圧 (収縮期160 mmHg以上、拡張期100 mmHg以上)、脂質 (LDLコレステロール180 mg/dL以上、HDLコレステロール30 mg/dL以下)、トリグリセリド (500 mg/dL以上)、空腹時血糖 (140 mg/dL以上)、HbA1c ( 7.0%以上)のいずれかを満たすものとした。健康行動は、運動習慣、喫煙、アルコール摂取、食生活、病院への受診回数、投薬状況を評価した。統計解析は潜在クラス分析を用いて、年齢、性別、健康行動を変数としクラスターを作成した。適切なクラスタリングの選択にはベイズ情報量基準 (BIC)と赤池情報量基準 (AIC)を基準とした。欠損データにおいてはランダムに欠落しているという仮定のもと、補完した。統計ソフトはRを使用した。 </p><p>【結果】</p><p> 12,168名が対象となり、最も適切なクラスター数は5となっ た。クラスター1は2,389名であり、特徴として運動習慣があり、適切な食生活など適切な健康行動をとっていた。また、 74%が過去に病院受診をしていない傾向にあった。そのため「健康的な生活を送りながら病院受診に消極的なグループ」と命名された。クラスター2は2,215名であり、95%が喫煙しておらず、グループ1と同様に適切な健康行動の傾向になったが 99%が女性であったことから「健康的な生活習慣を持つ女性を中心としたグループ」とした。クラスター3は最も多い4,395名となり「一般的な労働者」、クラスター4は2,098名で49%が喫煙しており、飲酒習慣がある者が多いため「生活改善が必要な中年層グループ」と名付けた。クラスター5は30%が生活習慣病の既往があり、53%が投薬をしていたため「生活習慣病治療の対象者」と名付け、1,071名であった。 </p><p>【考察】</p><p> 本研究により、健康行動のパターンが識別可能であることを明らかにした。このことは公衆衛生におけるアプローチを考える際に、それぞれの集団の特性に合わせたアプローチの必要性を示唆する。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき実施され、参加者はプログラム開始時に、プログラム上で収集したデータを今後の研究に使用する可能性があることを明記したプライバシーポリシーに同意した。また、本研究は甲南女子大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。</p>

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