後期高齢者の質問票を用いたフレイル判定およびフレイルと質問票下位項目との関連について

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 厚生労働省 (2019)は,フレイル等の高齢者の特性を把握する目的で後期高齢者の質問票 (以下,質問票)を作成した。質問票は多面的な10領域を15項目で網羅的に評価することできる。これまでの報告では,地域在住高齢者を対象に基本チェックリストなどを用いてフレイル状態が判定されているが,質問票を用いた報告は,我々の渉猟した範囲では見当たらない。フレイルに影響しやすい領域を把握することは,高齢者の健康増進を支援するための重要な情報となる。本研究は札幌市の事業として,通いの場に参加する高齢者を対象に質問票を用いてフレイル状態を判定した上で,質問票の各下位項目がフレイル状態にどの程度影響するかを検討した。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は令和4年4月1日から令和5年2月14日までの間に,通い の場に参加した65歳以上の地域在住高齢者3239名とした。篠原ら(2022)の報告をもとに,質問票下位項目を2件法に変換し, 4点以上をフレイル群,3点以下を非フレイル群とした。 調査項目は年齢,性別,質問票とした。統計解析には, Mann-Whitney検定,カイ二乗独立性の検定またはFisherの正確確率検定を用いた。有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> フレイル群に1012名,非フレイル群に2227名が分類された。 フレイル群では質問票の全下位項目で有意差を認め, No.1 (主観的健康観)(φ=-0.348),No.4 ,5 (口腔機能)(φ=-0.355,-0.343), No.7 (歩行速度)(φ=-0.315), No.10,11 (認知機能)(φ=-0.325, -0.36)が効果量中であり,それ以外の項目が効果量小であった。 </p><p>【考察】</p><p> 本 研究では通いの場の参加者の約3割がフレイルと判定され,先行研究と類似した結果であった。質問票の下位項目では,主観的健康観,口腔機能,歩行速度,認知機能がフレイルとより強く関連していた。この結果より,生活習慣を反映する下位項目よりも,機能面を反映する下位項目の方がフレイルに関連しやすい傾向にあると考える。フレイルは身体的・精神的・社会的の3つの側面が互いに関連し合うと報告されている。本研究は,通いの場に参加している高齢者を対象としたため,社会的側面に比べて身体的・精神的 側面に関連する下位項目がよりフレイルの判定に影響していたと考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った。取得したデータは連結不可能匿名化されており,データの利用については事業実施時に対象者より同意を得ている。また本発表については事業主体である市介護保険課の了承を得て実施している。</p>

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