新型コロナウイルス感染症患者専用病棟入院患者に対する在宅復帰予測のためのClinical Frailty Scaleの有用性

DOI
  • 川村 皓生
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 谷本 正智
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 松井 孝之
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 橋本 駿
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 山崎 栄晴
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 戸沢 拓
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 西村 淳
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 永坂 正臣
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 増田 悠斗
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部
  • 加賀谷 斉
    国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が長期化し、重症化率は低下する一方で高齢者や併存疾患を有する者は依然として重症化リスクを有し、医療機関への入院措置がとられる場合がある。COVID-19患者専用病棟(コロナ病棟)では、入院治療中に廃用をきたして日常生活活動能力が低下し、自宅退院が困難となる症例も多い。その背景に虚弱の影響が考えられているが、十分な知見は得られていない。今回、コロナ病棟入院患者の虚弱の程度と自宅退院との関連について調査することを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> 2022年1~12月に当センターコロナ病棟に入院した138名(年 齢83±8歳、在棟日数11±3日)の入院中の診療録情報を後方視的に調査した。エンドポイントはコロナ病棟から直接の自宅退院の可否とし、退院可能群と退院困難群に分類した。虚弱の程度をCFS(Clinical Frailty Scale)にて判定し、エンドポイントとの関連を分析した。判定は、解熱しリハビリテーションが可能となった発症5日目前後に行った。自宅退院の可否を状態変数、 CFSを検定変数としてROC(Receiver Operating Characteristic)解析によりCut-off値を算出した。さらに自宅退院の可否を従属変数、CFSを独立変数、年齢や性別を調整変数としてロジスティック回帰分析を行った(有意水準5%)。 </p><p>【結果】</p><p> 入院時のCOVID-19感染症重症度は軽症58名、中等症Ⅰ47名、中等症Ⅱ33名であった。退院可能群は75名、退院困難群は63名で、CFS中央値[四分位範囲]はそれぞれ5[3-6]、7[6-7]であった。ROC解析の結果、自宅退院を困難とするCFSのCut-off値は感度70.7%、特異度84.1%で6点以上であった(曲線下面積 0.816)。ロジスティック回帰分析では調整後も自宅退院可否と CFSは有意な関連を示し、オッズ比13.4(95%信頼区間 :3.98-45.4)、判別的中率は81.6%であった。 </p><p>【考察、結論】</p><p> コロナ病棟においてCFSによる虚弱の程度を評価することは、急性期治療後も入院を継続する必要性の高い症例を簡便に発見することができる評価指標として有用と考えられた。中等度以上の虚弱を有する場合、隔離と活動性低下が在宅復帰の阻害要因である可能性があり、早期からのリハビリテーションの重要性を示している。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を得て実施し(承認番号1582-2)、研究対象者にはオプトアウトにて研究内容の照会および拒否の機会を保障している。</p>

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