地域在住高齢者における認知機能簡易チェックリストの開発とその妥当性の検証

DOI
  • 國枝 洋太
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター リハビリテーション科
  • 小山 真吾
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター リハビリテーション科
  • 河村 康平
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター リハビリテーション科
  • 武田 晃一
    順天堂大学医学部附属浦安病院 リハビリテーション科
  • 森沢 知之
    順天堂大学 保健医療学部理学療法学科
  • 澤 龍一
    順天堂大学 保健医療学部理学療法学科
  • 高橋 哲也
    順天堂大学 保健医療学部理学療法学科
  • 和田 太
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター リハビリテーション科 順天堂大学 保健医療学部理学療法学科
  • 髙倉 朋和
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター リハビリテーション科 順天堂大学大学院 医学研究科リハビリテーション医学
  • 藤原 俊之
    順天堂大学大学院 医学研究科リハビリテーション医学 順天堂大学 保健医療学部理学療法学科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>地域在住高齢者における多領域の正確な認知機能評価は,専門職のいない場面では実施が難しい.そこで今回新たな認知機能スクリーニング指標として,6つの認知領域から構成される認知機能簡易チェックリスト(Brief Cognitive Checklist, BCCL)を作成した.本研究はBCCLが地域在住高齢者の認知機能スクリーニングに適用できるか検証するため,日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)との関連性を調査することを目的とした. </p><p>【方法】</p><p>対象は65歳以上の地域在住高齢者253名(平均年齢77歳,女性85%)とした.評価項目は基本属性,BCCL,MoCA-J,基本チェックリスト(KCL)とした.BCCLの質問は①一度に複数のことをしようとすると混乱してしまいますか(はい=1点),②自分で電話番号を調べて電話をかけることをしていますか(いいえ=1点),③5分前のことが思い出せますか(いいえ=1点),④慣れた場所で道に迷うことがありますか(はい=1点),⑤あれ,それ等の単語を使うことが多くなってきたと感じますか(はい =1点),⑥最近他者との関係がうまくいかないと感じますか(はい=1点)を使用した.軽度認知障害(MCI)はMoCA-J合計点が26点未満と定義した.統計解析はBCCLとMoCA-Jで偏相関分析を実施し,BCCL合計点別にMCI有病率をカイ二乗検定で比較した. </p><p>【結果】</p><p>BCCL合計点は中央値2(四分位範囲1-2)点であり,認知機能低下と判定した3点以上は49名(19.4%,前期高齢者17名,後期高齢者32名)であった.性別とポリファーマシー有無を調整変数としたMoCA-JとBCCLの偏相関分析では,全体 (r=-0.134, P=0.034)および前期高齢者(r=-0.216, P=0.047)で有 意な負の相関を示した.一方MoCA-JとKCL認知項目では有意な関連を示さなかった.またBCCLが3点以上ではMCI有病率が 71.4%であり,2点以下と比較し有意に高く(P=0.030),前期高齢者でも同様の結果であった(P=0.004). </p><p>【考察】</p><p>BCCLは地域在住高齢者の認知機能スクリーニングに使用されているKCL認知項目よりも幅広い領域の質問を含むため,MoCA-Jとの有意な関連を示した可能性がある.また前期高齢者ではBCCL3点以上で有意にMCI有病率が高く,認知機能低下の参考値としての有用性が示唆された.しかしBCCLが2点以下であってもMCI有病率は32.9%と高く,社会背景や生活習慣を考慮してBCCLの結果を解釈することが望まれる. </p><p>【結論】</p><p>BCCLは特に前期高齢者の認知機能スクリーニング指標として有用である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則って実施し,研究計画は順天堂大学医学部医学系研究等倫理委員会の承認を得た (承認番号G20-0016).参加者には口頭で研究の概要を説明し,書面による同意を得た上で実施した.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ