腰痛を有する看護・介護職員に対する運動機能テストの取り組み ~motor controlテストに着目した評価項目の検討~

DOI
  • 羅津 涼太
    社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
  • 中原 義人
    社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
  • 横田 俊輔
    社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
  • 成兼 結
    社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
  • 髙野 涼太
    社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
  • 鈴木 浩斗
    社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター

抄録

<p>【目的】</p><p>当院の衛生委員会では、令和4年度に看護・介護職員に対し腰痛軽減、予防を目的に理学療法士による運動機能テストを実施した。今回、腰痛有症者に対する結果を後方視的に調査し、実施不可が多かったmotor controlテストに着目して各運動機能テストとの関連性からその有用性について検討した。</p><p>【方法】</p><p>対象は、当院に勤務する看護・介護職員で腰痛を有しており、 今回の取り組みに参加を希望した22名 (男性2名 女性20名、平 均年齢39.4歳)。理学療法士5名がマンツーマンで運動機能テストを実施した。Luomajokiらによるmotor controlテスト6項目(おじぎ、骨盤後傾テスト、片脚立位、膝伸展テスト、臥位での膝屈曲テスト、前後四つ這いテスト)のうち、2項目以上実施不可を陽性群、それ以外を陰性群に分け、それぞれの群において、 ①痛みの発生要因についての問診、②自動運動(前屈、後屈、側屈、回旋)の制限と疼痛有無、③股関節屈曲、SLR、足関節背屈の関節可動域と肋骨角、Thomas test、④ASLRテスト、⑤各 motor controlテストの実施可否を調査した。結果について、関節可動域の測定はt検定、それ以外をFisherの正確確立検定を用いて比較検討した(p<0.05)。</p><p>【結果】</p><p>motor controlテストの陰性群は4名、陽性群は18名であった。骨盤後傾テストの実施不可者は、陰性群0名に対し陽性群15名と有意に多かった (p<0.05)。また、足関節背屈可動域の平均値については陰性群25°に対し、陽性群19°と有意に低下していた (p<0.05)。</p><p>【考察】</p><p>看護・介護現場では、時間に追われ、体位交換やトイレ介助時 に無理な姿勢をとりやすい。腰部の安定性が低下し、腰椎の動きを適切に制御できなくなることにより腰部の組織に負荷がかかり腰痛を生じるリスクがある。骨盤後傾には腹筋群や大殿筋、ハムストリングスの収縮が必要であるが、代償的に胸椎後弯を伴う方が多く選択的な制御が困難であった。また、陽性群において足関節背屈制限を伴う方が多い結果から、起立やしゃがみ動作においても負荷が掛かりやすい状況である。以上の事から腰部の安定化エクササイズや実地的な動作指導の必要性が示唆された。 従来、筋力などの評価については様々な報告がなされているが、看護・介護職員における運動機能テストの項目の一つとして motor controlに着目する事で、身体的な気づきや対策を講じることが出来る可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は当法人の倫理委員会にて承認を得た。 ヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分行い、研究内容についての趣旨が記載された同意書にて説明し同意の署名を頂いた。</p>

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