リハビリテーション専門職によるデイサービススタッフに対する遠隔支援が利用者の心身機能に及ぼす影響

DOI
  • 新井 武志
    目白大学 保健医療学部理学療法学科
  • 植田 拓也
    東京都健康長寿医療センター研究所 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター
  • 山中 信
    東京都健康長寿医療センター研究所 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター
  • 安齋 紗保理
    城西国際大学 福祉総合学部理学療法学科
  • 中瀬 咲子
    あけぼの診療所 理学療法士
  • 柴 喜崇
    福島県立医科大学 保健科学部理学療法学科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 本研究の目的は,リハビリテーション(以下リハ)専門職が配置されていないデイサービス(以下DS)のスタッフに対して,自立支援に資するリハの知識・技術を,ICT等を活用して遠隔で提供し, DSの利用者の心身機能がどのように変化するのかを検証することであった. </p><p>【方法】</p><p> 対象は,神奈川県内の2か所のDSを利用する37名であった.一方の施設を,リハ職による遠隔支援を行う介入施設(22名),他方を通常のケアを提供する対照施設(15名)とした.評価項目は, Barthel I ndex, 握力,TUG,SPPB(4m歩行時間含む),Vitality Index, WHO5, 主観的健康感(4件法)とした.評価時期は,初回,中間 (3ヶ月),最終(6ヶ月)とした.事前に研究者がスタッフに対して心身機能の評価方法を指導し,スタッフが実施した. 遠隔支援は,利用者の各時期における評価結果を基に,スタッフとリハ専門職がzoomでミーティングを実施し, DS利用時や在宅生活時の支援の内容や方法に関するアドバイスを実施した. 統計的解析は当初は介入と時間の要因の2元配置分散分析の予定であった.しかし,対照施設がコロナの影響等により最終評価の実施が困難だったため, 初回-中間をWilcoxon検定を用いて検討した.介入施設については3時点においてFriedman検定および多重比較としてBonferroni法を用いた. 本研究はJSPS科研費研究22K01950の一部として実施された. </p><p>【結果】</p><p> 介入・対照の両施設とも初回-中間の比較では,いずれの項目でも有意な変化は認められなかった.介入施設の3時点での比較では,SPPBの4m歩行時間と総得点で有意差があり,多重比較の結 果,どちらも初回と比較して最終評価が有意に低下する結果となった. </p><p>【考察】</p><p> 多くの項目は有意な変化を認めなかったが一部指標で有意な低下を認めた. 研究期間中に新型コロナ感染症のクラスターが発生するなど,特殊な要因も心身機能の変化には影響していることが考えられる.本研究にはさまざまな限界がある.まず,対象者数が少ないことに加えて入院や死亡といったイベントが発生し脱落が多くあった.スタッフへの遠隔支援が心身機能に及ぼす影響を評価するためには,今後できるだけ対象者数を増やし,より長期にわたって追跡することが求められる. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>研究代表者の所属機関である福島県立医科大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号一般 2021-208).本研究への参加にあたり,本人または家族へ研究の説明を行い,書面において同意を得て実施した.</p>

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