保存期慢性腎臓病患者における生体電気インピーダンス法によるPhase angleと身体機能の関連について

DOI
  • 横山 遥香
    大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 市立池田病院 医療技術部リハビリテーション科
  • 上月 渉
    大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科
  • 上田 哲也
    大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科
  • 松山 博文
    市立池田病院 医療技術部リハビリテーション科
  • 渡辺 彩
    市立池田病院 医療技術部リハビリテーション科
  • 畑中 良太
    大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科
  • 玄 安季
    大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科
  • 樋口 由美
    大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>慢性腎臓病(以下、CKD)患者は増加しており、骨格筋量や身体機能低下を呈することが多い。生体電気インピーダンス(以下、BIA)法は低侵襲かつ簡便、安全に推定式を介して骨格筋量を測定することができる。一方で、BIA法から直接算出されるPhase angle(以下、PhA)は細胞の健康状態を反映するため、栄養状態や予後指標にも使用されている。国外において保存期CKD患者ではPhAと骨格筋量や筋力は正の相関があると報告されているが、PhAと身体機能の関連を検討した報告はない。そこで本研究では、保存期CKD患者におけるBIA法によるPhAと身体機能の関連について調査した。 </p><p>【方法】</p><p>2022年4月から2023年3月まで当院に入院した保存期 CKD患者64名(75.2±1.1歳、男性46人、eGFR26.2± 13.0mL/min/1.73m2)を対象とした後方視的研究である。診療録より年齢、性別、BMI、血液データ(eGFR)、体組成(PhA)を 収集した。身体機能は握力、5回椅子立ち上がり、4m歩行、タンデム立位保持、SPPB得点を評価した。体組成の測定には InBody社InBody S10を使用した。統計解析はPhAと身体機能、他変数との関連性をPearsonの積率相関係数、Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。その後、PhAと有意な相関を示した身体機能毎に年齢、性別、eGFRを独立変数、PhAを従属変数とした重回帰分析 (強制投入法)を行った。統計解析にはIBM SPSS Statistics(Ver.29)を用い、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p>PhAは4.70±0.87°、身体機能は握力27.1±8.3kg、 SPPB得点9.8±3.0点、5回椅子立ち上がり12.9±4.4秒、4m歩 行4.2±1.3秒、タンデム立位9.7±2.2秒であった。PhAは握力 (r=0.61)、SPPB得点(r=0.51)と有意な中等度の正の相関を示し、 5回椅子立ち上がり(r=-0.49)と有意な中等度の負の相関を示した。4m歩行(r=0.36)、タンデム立位保持(r=0.32)との間には有意な軽度の正の相関を示した。重回帰分析においてPhAは握力( β=0.52)、SPPB得点(β=0.28)、5回椅子立ち上がり(β=-0.28)、タンデム立位保持(β=0.27)と有意な関連性が認められた (年齢、性別、eGFRによる調整済み)。各モデル式のR 2は0.385~0.498であった。 </p><p>【考察】</p><p>本研究の結果から保存期CKD患者のPhAは年齢や性別、 eGFRで調整した後も握力やSPPB得点、5回椅子立ち上がり、 タンデム立位保持と有意な関連性を示した。保存期CKD患者においてPhAは骨格筋量だけでなく、身体機能と関連があることが示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、市立池田病院研究倫理審査委員会の承認(承認番号:B005)を得て実施した。</p>

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