コロナ禍における小学児童の柔軟性の変化について

DOI

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 近年、コロナ禍における感染予防対策に伴う長期活動制限により、子どもの運動機能低下が加速度的に進行していることが懸念されている。しかし、運動機能低下の中でもケガに大きく関与する柔軟性に着目した報告は少ない。今回、小学児童に対し令和2年度から実施している柔軟性チェックテストの結果を整理し、得られた知見について考察する。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は、熊本市R小学校の令和2・3・4年度の5年生(90名・92 名・81名)である。テストは、①しゃがみこみ(足関節周囲の柔軟性)・②立位体前屈(股関節周囲の柔軟性)・③上肢挙上(肩関節周囲の柔軟性)の3項目とし、児童3人1組のグループ毎にセラピストがテストを実施した。データ解析は、令和2・3・4年度において、3項目の内1つでもテストが困難であった柔軟性低下群・全てのテストが可能であった柔軟性非低下群の割合。また、しゃがみこみ・立位体前屈・上肢挙上それぞれについて可能群 ・困難群の割合をフィッシャーの正確確率検定にて比較検討した。 </p><p>【結果】</p><p> 令和2・3・4年度の小学児童において、3項目の内1つでもテストが困難であった柔軟性低下群の割合は、11%・21%・26%と増加傾向を示し、令和2・4年度間で有意な増加を認めた (P=0.016)。また上肢挙上の困難群の割合においても、0%・2 %・6%と増加傾向を示し、令和2・4年度間で有意な増加を認 めた(P=0.022)。しゃがみこみ・立位体前屈に関しては、困難群の割合で増加傾向であったものの、有意な差を認めなかった。 </p><p>【結論】</p><p> 令和2・4年度間を比較し、小学児童の柔軟性低下が進行している実態が明らかになった。骨格筋は、1週という短期の不動で伸張性が低下すると報告されており、コロナ禍における長期活動制限は、運動量減少を招き、徐々に柔軟性低下へと繋がったと考えられる。また、活動制限中のスクリーンタイム(映像視聴時間)増加は、姿勢の崩れ(円背姿勢)を招き、上肢挙上困難に大きく関与したと考えられる。今後、柔軟性低下を起因としたケガは、より一層増加することが懸念される。このことからも、理学療法士が地域の子どもに対してストレッチ指導や姿勢指導を実施する機会は今まで以上に重要になってくると考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った。また、得られたデータは個人情報が特定できないように配慮した。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ