足底に貼付した伸縮性テーピングが片脚起立の実施可否に及ぼす影響

DOI
  • 小樋 雅隆
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 奥野 将太
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 澤田 優樹
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 佐藤 光倫
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 西村 啓祐
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 友廣 茉里奈
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 小薗 楓
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 和田 莉奈
    株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション部
  • 古賀 秀信
    株式会社麻生 飯塚病院 臨床研究支援室

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>下肢の術後患者には免荷により片脚起立が必要な患者がおり、転倒リスクや介助量が増大する。伸縮性テーピング(以下、KT)は筋機能改善の効果があり、理論上はKTを足底に貼付し足趾把持力を改善すれば片脚起立は改善する可能性がある。しかしKTを貼付し片脚起立の可否を調べた研究は見当たらない。そこで本研究は健常若年者の足底にKTを貼付し片脚起立が改善するかを調査した。 </p><p>【方法】</p><p>対象は60歳以下の健常若年者とした。測定は性別、年齢、身長、体重、BMI、足長、足幅とした。プライマリーアウトカムは、片脚起立が可能な座面高 (40cm、30cm、20cm、 10cm)とした。セカンダリーアウトカムは、足圧重心軌跡長とし、住友理工のSRソフトビジョンを使用した。研究デザインはクロスオーバーデザインとし、初回KT無、2回目KT有と初回 KT有、2回目KT無の2群にランダムに群分けした。初回と2回 目の間は6日とし、測定は右足のみとした。KTはKINESIO® TEX PLUS WAVEを使用し、母趾球から踵骨に母趾伸展位から KTを伸張せずに貼付した。統計解析はKT貼付の有無で2群に群分けし、連続変数はWilcoxon の符号付順位和検定とカテゴリー変数はMcNemar検定を行った。統計解析ソフトはEZRを使用し、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p>対象は42名(男性22名/女性20名)、年齢は 34.5(28,44.5)歳であった。各座面高での片脚起立可否(KT無 /KT有)は40cm:97.6%/95.2% (p=0.48)、 30cm:76.2%/78.6%(p=1.00)、20cm:47.6%/59.5%(p=0.074)、 10cm:40.5%/47.6%(p=0.37)であり有意差は認めなかったが、 KT有の方がより低い座面高で起立可能者が多い傾向にあった。足圧重心軌跡長の Y軸長は、(KT無/KT有)は 40cm:7.6cm/8.1cm(p=0.028)、30cm:7.3cm/7.7cm (p=0.54)、 20cm:8.2cm/9.3cm(p=0.044)、 10cm:9.95cm/10.65cm(p=0.083)であり、40cm台、20cm台で有意差を認めた。 </p><p>【考察】</p><p>今回のKT貼付方法では起立時の重心を上方移動する相の膝伸展筋、股伸展筋への効果が不十分だったため、片脚起立に有意な差がなかったと考えられる。しかし、足圧重心軌跡長のY軸長は延長しており、成功者の割合が増えていることから、足底へのKT貼付により足趾把持力や母趾球の固有受容器の感覚入力が改善したことで、起立時の重心を前方移動する相の補助になったと考えられる。そのため足底へのKT貼付は起立の重心を前方移動する相の一助となり、転倒リスクや介助量の軽減に繋がることが示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>研究の実施に先立ち、株式会社麻生飯塚病院臨床研究倫理審査委員会にて承認を得た (R22015)。すべての対象者に研究の目的と内容を書面にて説明し、文書による同意を得た。</p>

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