医療福祉複合施設における医療従事者と関連職種の腰痛の関連因子の検討

DOI
  • 久保 直之
    福井総合病院 リハビテーション課
  • 堀 秀昭
    福井医療大学 保健医療学部 リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 水野 勝則
    福井総合病院 整形外科

抄録

<p>【目的】</p><p>厚生労働省は2013年に職場における腰痛予防対策指針を改定し、対象作業に福祉・医療分野等における介護・看護作業を追加し、腰痛健康診断の実施を義務化した。しかし、医療福祉複合施設において医療従事者や関連職種を対象に腰痛の関連因子を検討した報告は少ない。そこで、医療福祉複合施設における医療従事者と関連職種に対し腰痛健康診断を実施し、身体機能も含め、腰痛の関連因子を横断的に調査した。 </p><p>【方法】</p><p>医療福祉複合施設に従事する1,157名に腰痛健康診断 を実施した。検討項目は、年齢、性別、体格指数 (BMI)、職種、勤続年数、腰痛治療歴の有無の基礎情報、腰痛の自覚症状、他動下肢伸展挙上角度 (他動SLR角度)とKraus-Weber testによる腹筋能力の他覚症状とし、全ての項目が調査可能であった 1,070名をデータ分析対象とした。腰痛の有無は、自覚症状の腰痛の程度より腰痛無し (腰痛無し群268名)と腰痛有り (腰痛有り群802名)を判定した。2群間比較項目は、年齢、性別、 BMI、勤続年数、職種、腰痛治療歴の有無、他動SLR角度、腹筋能力とし、χ2検定と残差分析を行った。腰痛の関連因子の抽出には目的変数を腰痛の有無、説明変数を全ての2群間比較項目とし、ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p>2群間比較において、腰痛有り群で女性の比率 (630名 78.6%)、職種で看護職の比率 (375名46.8%)、腰痛治療歴の有る者の比率 (290名36.2%)が有意に高かった。身体機能では、腰痛有り群で他動SLR角度の低下者 (116名14.5%)と腹筋能力の低下者 (200名24.9%)の比率が有意に高かった。 ロジスティック回帰分析による腰痛の関連因子には、性別 (OR1.57)、職種 (OR2.14)、腰痛治療歴の有無 (OR3.88)、他動 SLR角度 (OR2.06)、腹筋能力 (OR1.57)が抽出された。 </p><p>【考察】</p><p>腰痛に関連する身体機能に、ハムストリングスの柔軟 性と腹筋能力の低下が関与した。そのため、二次健診としてリハビリテーションによる身体機能の改善が必要と考える。また、腰痛有訴者に対して整形外科的精査や治療を受けることができるよう二次健診のシステムを構築する必要がある。そして今後、二次健診を実施し、腰痛有訴率や関連因子が指摘された従事者について縦断的な追跡調査が重要と考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、新田塚医療福祉センター倫理審査委員会の承認 (新倫2021-7号)を受け実施した。また、対象者には書面にて研究の趣旨を説明の上同意を得た。</p>

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