新型コロナウイルス感染症流行前・流行中における医療従事者の運動習慣の変化と自己効力感の関連性:地域中核病院の職員を対象とした縦断研究

DOI
  • 福榮 竜也
    霧島市立医師会医療センター 医療支援部 リハビリ室
  • 愛下 由香里
    霧島市立医師会医療センター 医療支援部 リハビリ室 鹿児島大学大学院 保健学研究科
  • 宇都 良大
    霧島市立医師会医療センター 医療支援部 リハビリ室

抄録

<p>【はじめに】</p><p>医療従事者における自己効力感の高さは、職務へのモチベーション向上や離職願望の抑制につながる。しかしコロナ禍では様々な医療職種で心理ストレスが増大し、直接的あるいは間接的に自己効力感が低下しやすい。これまでに身体活動と自己効力感は正の関連が認められており、運動習慣が自己効力感の維持改善の要因となる可能性がある。本研究は地域中核病院の医療従事者を対象に、コロナ流行前・流行中の運動習慣の変化と自己効力感の関係性を縦断的に調べた。 </p><p>【方法】</p><p>2019年11月の健康調査に参加した113名のうち、 2021年11月の健康調査に参加し、評価項目に欠損の無い77名(平均年齢38.8±12.1歳, 女性68.8%)を解析対象とした。自己効力感は一般性セルフエフィカシースケールにて評価した。運動習慣は月に数回以上運動している場合を運動習慣ありとした。 2021年のみ、あるいは2019年と2021年のいずれも運動習慣ありと回答した者を運動習慣あり群、2019年と2021年のいずれも運動習慣なしと回答した者を非運動習慣維持群、2019年に運動習慣あり、2021年に運動習慣なしと回答した者を運動習慣減少群と操作的に定義した。統計解析は2019年時における3群間の特徴をポストホック解析にて比較した。また共分散分析にて、2021年時における3群間の一般性セルフエフィカシースケールの得点を比較した(共変量:性別、年齢)。 </p><p>【結果】</p><p>運動習慣あり群24名(31.2%)、非運動習慣維持群31名 (40.3%)、運動習慣減少群22名(28.5%)に分類された。2019年時における3群間の一般性セルフエフィカシースケールの結果は、運動習慣あり群(7.5±4.9点)と比較して非運動習慣維持群 (4.9±6.7点)の得点が有意に低かった。運動習慣減少群(6.7± 3.3点)は有意差が無かった。2021年時における3群間の一般性セルフエフィカシースケールの結果は、運動習慣あり群(8.4± 4.1点)と比較し、非運動習慣維持群(5.5±3.4点)と運動習慣減少群(4.5±2.9点)が有意に低かった(F値=5.83, p<0.01, η2= 0.176)。 </p><p>【考察】</p><p>コロナ禍に運動習慣が減少した者は特に自己効力感が低下しやすいことが分かった。月に数回程度の運動習慣を維持することは自己効力感の維持向上に重要かもしれない。 </p><p>【結論】</p><p>コロナ禍における医療従事者の運動習慣は、自己効力感に対して保護的に作用する可能性がある。自己効力感に対する組織的なマネジメントの一部として、職員の運動習慣に着目することは有益だろう。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>当院倫理委員会の承認後(審査番号:201901)、対象者全員に書面で同意を得て実施した。</p>

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