腰痛と自己危険行動の関連―労働者を対象とした疫学研究―

DOI
  • 田村 拓之
    国際医療福祉大学大学院 医学研究科 NECライベックス カラダケア事業推進室
  • 中田 光紀
    国際医療福祉大学大学院 医学研究科
  • 頓所 つく実
    国際医療福祉大学大学院 医学研究科 公益財団法人 医療科学研究所
  • 菊永 一輝
    国際医療福祉大学大学院 医学研究科
  • 並木 連太郎
    株式会社日本コンサルタントグループ コンサルティング部
  • 横山 和仁
    国際医療福祉大学大学院 医学研究科 順天堂大学 医学部衛生学講座

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> テレワークなどの働き方の変化によって、労働者が疾病状態で も勤務するプレゼンティーズム (疾病就業)が問題となっている。この行動は、自己を危険にさらす働き方(Self-Endangering Work Behavior:以下SEWB)の一部であり、長期化すると心身 に不調をきたすと言われている。腰痛は、プレゼンティーズムを引き起こす主な身体疾患のひとつであるが、SEWBと腰痛の関連は明らかでない。本研究では、SEWBと腰痛との関連を明らかにする。また、腰痛には運動療法が有効とされているため、運動習慣によって、SEWBと腰痛の関連に変化が生じるかも明らかにする。 </p><p>【方法】</p><p> 自記式質問紙による1404名のデータを用いた横断調査を行った。SEWBはYokoyama et alによる日本語版 (Juntendo Medical Journal, 2022)を用いた。従属変数を腰痛の有無、独立変数をSEWB高低群として設定し、社会経済因子で調整した多重ロジスティック回帰分析により調整オッズ比(Adjusted Odds Ratio: AOR)と95%信頼区間(Confidence Interval: CI)を算出した。次に運動習慣をあり・なしの2群に分け、SEWB高低群と運動習慣の有無で組み合わせた4通りの変数を作成した。その中でSEWB低群かつ運動習慣あり群を参照群とし、残りの変数に対し上記と同様の手順でAORと95%CIを算出した。 </p><p>【結果】</p><p> SEWB高群は低群と比べて腰痛のオッズ比が有意に高かった (AOR: 1.66, 95%CI: 1.34-2.05, p<.001)。また、SEWB低群かつ 運動習慣あり群に対する腰痛オッズ比はそれぞれ、SEWB低群かつ運動習慣なし群(AOR: 1.66, 95%CI: 1.13 ‒ 2.44, p = .010)、 SEWB高群かつ運動習慣あり群(AOR:2.03, 95%CI: 1.28 ‒ 3.22, p=.003)、SEWB高群かつ運動習慣なし群(AOR: 2.23, 95%CI: 1.49 ‒ 3.34, p<.001)であった。 </p><p>【考察】</p><p> 本研究の結果から、腰痛とSEWBは有意な関連があるが、 SEWBの程度に関わらず運動習慣があるとその関連を減弱させることが明らかになった。しかし、SEWBが高いと腰痛のリスクも大きいため、腰痛にならない運動を推奨とするとともに、 SEWBを減らす対策が求められる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を受けて実施した(21-Ig-166-3)</p>

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