高齢女性直腸脱症例の脊柱アライメントからみた直腸脱の予防についての検討

DOI
  • 槌野 正裕
    大腸肛門病センター高野病院 リハビリテーション科
  • 荒川 広宣
    大腸肛門病センター高野病院 リハビリテーション科
  • 小林 道弘
    大腸肛門病センター高野病院 リハビリテーション科
  • 岩下 知裕
    大腸肛門病センター高野病院 リハビリテーション科
  • 堀内 大嗣
    大腸肛門病センター高野病院 リハビリテーション科
  • 米川 寛隼
    大腸肛門病センター高野病院 リハビリテーション科
  • 高野 正太
    大腸肛門病センター高野病院 大腸肛門機能科
  • 伊禮 靖苗
    大腸肛門病センター高野病院 大腸肛門機能科
  • 高野 正博
    大腸肛門病センター高野病院 大腸肛門機能科

抄録

<p>【背景】</p><p>脊柱変形は高齢者の健康関連QOLに影響を与えるとさ れており、胃食道逆流症が増加するとの報告もみられる。近年、当院では直腸脱(rectal prolapse:RP)で手術が行われる症例が 増加しており、臨床的には脊柱変形を伴い運動機能が低下している高齢女性に多くみられるため、入院中は運動機能低下の予防に取り組んでいる。今回、RPで手術予定症例の脊柱矢状面アライメント(Sagittal Spino-pelvic Alignment:SSPA)を計測し、その意義を検討したので報告する。 </p><p>【対象と方法】</p><p>2020年1月から2022年2月にRPで手術が予定され、股関節を含めた全脊椎側面像の撮影が行われた女性20例 (84.25±9.02歳)を対象とした。被験者はできるだけ自然な姿勢で立位をとり、腕を30~60度挙上されるよう手を設置した棒の上に乗せてX-線を撮影し、金村らの方法でPI(pelvic incidence)、PT(pelvic tilt)、SS(sacral slope)、LL(lumbar lordosis)、SVA(sagittal vertical axis)、T1STA(T1sagittal tilt angle)、T9STA(T9 sagittal tilt angle)を計測した。 </p><p>【結果】</p><p>PI(65.0±16.8°)、PT(39.1±10.6°)、SS(25.5±14.3 °)、LL(34.0±20.0°)、SVA(100.6±58.1mm)、T1STA(0.17± 6.5°)、T9STA(-13.2±7.3°)。16例(80%)に圧迫骨折、19例 (95%)に椎体の変形を認めた。 </p><p>【考察】</p><p>日本人における80歳代女性について大江らはPI(53.6 ±12.3°)、PT(27.8±11.5°)、SS(25.8±12.1°)、LL(34.9± 18.9°)、SVA(84.5±52.1mm)、PIは年齢による影響を受けないとされているが、女性では有意差を認めないものの加齢に伴い増加する傾向が認められ、PTは女性で年齢に伴い有意に増加したと報告している。また、BoulayらによるとPI≧62°で会陰部の下垂が大きいと報告しており、RPではPI、PTが鈍角であることが示された。また、T1STA (-3.7±2.7°)、T9STA(-9.5± 3.0°)と金村らは報告しており、今回の調査と比較するとRPは SVAとT1STAが増大し、T9STAが減少した胸椎後彎が増強した不良姿勢であるが、更にPTも大きくなっていることから姿勢を矯正する代償機能も働いていないことが考えられる。RPは骨粗鬆症や圧迫骨折などの脊柱変形だけではなく、姿勢を矯正する代償機能を働かせることも出来ないため、年齢の影響を受けないとされるPIが増大していると考えられる。高齢女性RPを予防するためには、骨粗鬆症や圧迫骨折を予防するだけではなく、変形した脊柱アライメントを矯正するための代償機能獲得への取り組みも必要であると考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、大腸肛門病センター高野病院倫理委員会の許可 (第18-18番)を得て、個人情報保護指針に則り個人が特定されないように配慮して行った。</p>

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