医療職における主観的健康感と労働生産性に関係する要因

DOI
  • 岡原 聡
    大阪急性期・総合医療センター 医療技術部・セラピスト部門
  • 高尾 弘志
    大阪急性期・総合医療センター 医療技術部・セラピスト部門
  • 花木 一生
    大阪急性期・総合医療センター 医療技術部・セラピスト部門
  • 上田 剛裕
    大阪急性期・総合医療センター 医療技術部・セラピスト部門

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 労働者の健康保持増進に関する課題は多様化しており、現場のニーズに対応した産業保健活動の見直しが求められている。近年、医療現場の労働環境が大きく変化しており、医療従事者の主観的健康感と労働生産性に関わる要因を検討することは重要である。本研究では、医療職における主観的健康感および労働生産性と、腰痛や転倒、運動習慣、睡眠、ワークエンゲイジメントの関係性について検討したので報告する。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は本研究に同意の得られた療法士26名とした。基礎情報のアンケート項目は年齢、性別、経験年数、1年間の腰痛・転倒 の有無とした。質問紙にて主観的健康感、運動習慣、体の痛み、体の不安、睡眠の休養、柔軟性、筋力を5段階のリッカート尺度で自己採点を行い、身体機能は握力、立位体前屈を測定した。また、労働生産性の評価項目としてプレゼンティーイズムは SPQ (Single-Item Presenteeism Question 東大1項目版)、ワー クエンゲイジメントはUWES (Utrecht Work Engagement Scale)17項目を用いた。統計学的解析は、主観的健康感ならびに労働生産性と各項目についての相関係数を算出した。 </p><p>【結果】</p><p> 対象は平均年齢32.7歳、男性18名・女性8名、医療職の平均経験年数10.5年であった。主観的健康感は自己評価の体の不安、睡眠の休養、柔軟性、筋力、ワークエンゲイジメントの活力項目、腰痛の有無の各項目と中程度の相関を示した (p<0.05)。また、SPQは自己評価の運動習慣 (R=0.390)と転倒経験 (R= 0.498)に有意な相関を示した (p<0.05)。 </p><p>【結論】</p><p> 医療従事者の主観的健康感に関わる要因として体の不安、睡眠状態、仕事への活力、腰痛の有無が影響することが分かった。職場の安全衛生のリスクを低減した上で健康増進を推進する際には、主体的健康感に関連する要因も考慮にいれながら産業保健体制や活動の見直しを進める必要があると考える。また、本研究の対象において労働生産性は運動習慣と転倒経験が関わることが示唆された。労働安全衛生を基盤とした安心安全な職場作りが推進されるなか働く人の健康状態を向上させる健康経営の概念が広く認識され始めている。第14次労働災害防止計画に理学療法士が明記されたことで産業保健専門職と協力した運動機会の創出により運動の習慣・定着化が進み労働災害予防や労働生産性の向上に寄与することを期待している。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき研究の趣旨を口頭および書面にて十分に説明し、個人情報の保護等を明記した同意書に署名を得て実施した。</p>

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