睡眠時間,残業時間,運動習慣,ストレスが慢性疼痛へ与える影響と業種別関連性

DOI
  • 渡 良太
    三省会 堀江病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>勤労者に健康増進,ウェルビーイングや慢性疼痛予防推進を図りたい.慢性疼痛と睡眠の関係は先行研究で明らかにされているが業種別の報告は少ない.今回業種別に着目して睡眠と残業時間,運動習慣,ストレスが慢性疼痛へ与える影響を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>当院健診を利用する勤労者804名を対象に自記式質問紙調査を実施.項目は年代,性別,睡眠時間,運動習慣,ストレス.仕事の就業有無や業種,勤務形態,通勤,残業時間.慢性疼痛有無.統計解析は生活習慣,慢性疼痛との関連に多重ロジスティック回帰分析を用いて影響を検討した.目的変数は慢性疼痛の有無で疼痛群と非疼痛群の2群に分類.説明変数は睡眠,残業,通勤時間,運動習慣, ストレ スとした.勤務形態の影響を除外するため日勤のみを対象とした.検定には統計解析ソフト,Rコマンダー4.2.2を使用し統計学的有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>対象者の業種は教育研究業184名,製造業142名,官公署135名,商業75名,保健衛生業63名,接客娯楽業47名,建設業38名,運輸業30名,その他90名.疼痛群378名,非疼痛群426名.非疼痛群の平均値は睡眠時間6.34,ストレス4.15残業時間16.6通勤時間47.0運動習慣5.89.疼痛群の平均値は睡眠時間6.08ストレス5.25残業時間20.2通勤時間47.19運動習慣4.83.全業種を対象とした統計結果では睡眠時間 (オッズ比:0.822,95%CI:0.683‐0.985)ス トレス (オッズ比:1.265,95%CI:1.168‐1.374)は慢性疼痛に有意に関連した.業種別で製造業は睡眠時間 (オッズ比: 0.650,95%CI:0.413‐0.989)教育研究業は運動習慣 (オッズ比:0.928,95%CI:0.880‐0.974)ストレス (オッズ比: 1.339,95%CI:1.135‐1.600)残業時間 (オッズ比:1.013,95 %CI:1.001‐1.026)に有意に関連を示した.</p><p>【考察】</p><p>全業種では睡眠時間の減少は疼痛群との関連は高く睡眠時間が増えるほど疼痛が減少しストレスが大きくなるほど疼痛が増える可能性が示唆された.製造業では睡眠時間が有意に関連した.教育研究業では運動習慣が少なくストレスが高く残業時間が多い傾向にあった.運動習慣や睡眠時間は量を増やし生活リズムを整え見直すことは慢性疼痛改善や予防に繋がる重要性が示唆された.今後は睡眠への教育や健診の機会が必要と考える.</p><p>【結論】</p><p>全業種では睡眠時間とストレス,製造業では睡眠時間.教育研究業では運動習慣,ストレス,残業時間が慢性疼痛の要因に影響を与える可能性を示唆した.</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は院内倫理委員会にて承諾を得た上,ヘルシンキ宣言に則り研究の目的・内容を説明し同意が得られた者を対象とした.実施にあたり開示すべき利益相反はない.</p>

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