要介護やフレイルになりにくい地域づくり ~地域診断の必要性とその取り組みについて~

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  • 森 優太
    花の丘病院 リハビリテーション科 松本クリニック 糖尿病内科 千葉大学 予防医学センター 国立長寿医療研究センター 老年学評価研究部

抄録

<p>【背景】</p><p>暮らすまちによってフレイル該当者、要介護リスク者の割合が 異なることが分かっている。また、健康なまちの条件として、例えば地域介護予防活動支援事業が積極的に実施されていたり、歩きやすい歩行コースが多い市町村ほど、フレイル高齢者が少ないことが報告されている。このように地域単位で評価することで地域の課題や対策が明らかになることがある。今回、理学療法士に求められる地域診断の必要性とその取り組みについて企画した。</p><p>【内容】</p><p>本セッションにおいては、まずは地域診断に関して紹介をしていく。地域診断とは、「公衆衛生を担う専門家が、地域活動を通して地域課題を明らかにし、地域活動を通して個人のケアに留まらず、集団あるいは地域を対象にケアを行い、地域課題を軽減・解消していく一連のプロセス」である。近年、理学療法士の働き方は多様化されており、地域で集団・組織等に関わる機会も増加している。今回、「地域診断とは何か」、「地域診断のメリット」、「地域診断の流れ」、「地域診断の進め方」について紹介を行う。特に、地域診断を実施する上でどのような項目を評価するのかが重要である。例えば、JAGES (日本老年学的評価研究)は2019年度に64市町村と共同し、市町村間比較をした。調査対象は、要介護認定を受けていない64市町村の高齢者約19万人弱である。集計単位は市町村で、その結果、例えば「暮らすまちによってフレイル該当者 (要介護リスク者)の割合が2.6倍も多いまちがある」ことが分かってきた。また、フレイル該当者割合と相関関係を示す要因を探索した。その結果、様々な社会参加のグループに参加している人が多い市町村ほど、フレイル該当者割合が少ないという負の相関を認めていることが分かった。これらのようにデータを用いて地域ごとに比較を実施することで課題も明らかになることがわかる。セッションの後半では地域診断・地域づくりを実際に実施して介入した事例を通して、理学療法士がどのような形で地域づくりに関与すれば良いのかも紹介していきたい。</p><p>【セッション参加で期待される効果】</p><p>理学療法士が個人のみではなく、地域といった集団に対して評価ができること、またその結果から地域づくりに貢献できることが期待できる。また、これらのノウハウを知り得ることで、地域で理学療法士が関与する割合が向上して、より他職種との連携が円滑になることが望まれる。</p>

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