当院におけるPICS予防に向けた取り組み ~標準プログラムを活用した入院から退院まで切れ目のない介入~

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抄録

<p>【背景】</p><p> Post Intensive Care Syndrome (PICS)は集中治療室 (ICU)に入室中あるいはICU退室後に生じる身体機能障害、認知・精神機能の障害という総合的な概念のことである。PICSを発症すると ICU在室期間や入院期間の延長、長期にわたる身体・精神機能回復の遷延、予後不良となる。加えて、患者家族にも心理的・社会的影響を及ぼすPICS-Family (PICS-F)も提唱され、PICSは患者・家族の社会的な影響も与える機能障害とされている。 現状、PICSに対する有効な治療法は確立されておらず、取りうる対策としては予防のみである。したがってPICSの予防は集中治療領域において重要な課題であり、リハビリテーション分野においても可及的早期からの介入が望ましいとされている。 鎮静や不動化はPICS発症のリスクとなることが知られているが、 PICS患者の中には人工呼吸器装着患者や意識障害を伴う重症例 も少なくない。このような患者に対して、安全かつシステマテ ィックな予防・介入方法としてABCDEFGHバンドルが有効と言われており、その中にE:早期離床が含まれている。 ICUにおける早期離床は急変リスクの高い患者に実施する為、離床の開始基準や中止基準、進行プロトコルが整備されている必要がある。また、ICU退室後も可及的にリハビリテーションを進行し機能改善を図ることも重要である。 </p><p>【取り組み】</p><p> 当院では診療ガイドライン等を参考にした標準プログラムを作成・運用しており、そのプログラムに準じた診療を入院から退院まで切れ目なく行っている。 標準プログラムは離床・バランス・筋力・可動域・痛み・運動耐容能といった機能障害別に分かれており、個々の症例の状態や問題点に応じてプログラムを選定し、フローチャートに則りステップアップしていくものとしている。 これらのプログラムの妥当性や有効性の検証作業は、当科で設定した品質目標の振り返り、診療ガイドラインや最新文献との整合性を検証する作業を通して定期的に実施している。これらを繰り返し行い、標準プログラムの内容の見直しと診療の振り返りをしつつ、PICSを含めた入院に伴う機能障害・ADL低下予防を図っている。 本セッションではPICSに対する予防的視点を踏まえ、標準プログラムを用いた患者介入を症例情報とともに紹介する。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>個人情報は、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス」及び、「症例報告を含む医学論文及び学会発表における患者プライバシー保護に関する指針」が推奨する指針を遵守して取り扱い、対象者には口頭および書面にて説明し同意を得た。</p>

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