サービス付き高齢者向け住宅の生活満足度への口腔関連因子の影響

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 地域包括ケアシステムの構築により高齢期の住まいのあり方の支援が課題となっている. 本研究は,ここ数年増加傾向にあるサービス付き高齢者向け住宅 (以下,サ高住)の生活満足度への口腔関連因子の影響を明らかにすることを目的に調査を実施したので報告する. </p><p>【方法】</p><p> サ高住の60歳以上の入居者68名に対し,自記式質問紙にて, 属性,生活満足度尺度K:Life Satisfaction Index K (以下LSIK),地域高齢者誤嚥リスク評価指標:Dysphagia Risk Assessment for the Community-dwelling Elderly (以下,DRACE,高値ほど誤嚥リスクが高い),生活機能,医療状況,義歯使用状況,外 出頻度,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の生活影響等に関する留置き調査を実施した.後日,3回唾液嚥下積算時間を2回測定し,短い方のデータを分析に用いた. 各項目とLSIKの関連について,Mann-WhitneyのU検定(2群間比較),Kruskal-Wallis検定(3群間比較),Spearmanの相関係数を用いて2変量分析を行った.次いで,LSIKを従属変数とした一般線形モデルによる多変量解析にてLSIKの関連要因を検討した. </p><p>【結果】</p><p> 3回唾液嚥下積算時間の測定が実施できた44名,男性12名,女性32名,平均年齢84.6±5.3歳を分析対象とした.LSIKと有意な関連がみられた項目は,義歯の使用 (0.027,p<0.05),新型コロナウイルス感染症による生活の変化 (0.013,p<0.05)であった.多変量解析の結果,LSIK高値には,義歯未使用, COVID-19の生活影響が無いこと,同居者以外に心配事や悩み事を聞いてくれる人がいること,3回唾液嚥下積算時間が短いこと,週1回以上外出していること,および,年齢が高いことが有意に関連していた. </p><p>【考察】</p><p> 嚥下機能が高いこと,同居者以外の情緒的サポート提供者の存 在は生活満足度を高めることが示唆された.一方,義歯の使用, COVID-19の生活影響,閉じこもりは生活満足度を低めていた.咀嚼・嚥下機能の維持には義歯は欠かせないものであることから,適切な義歯の作成や改良が期待される. </p><p>【結論】</p><p> サ高住は,住み替えをした自立から要介護状態までの入居者の住まいであることから,生活満足を高める支援が求められる.先行研究で指摘されている要因に加え,義歯の調整や嚥下機能の向上など口腔関連因子への介入の取組みも役立つものと考えられた. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は,桜美林大学研究倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号19071). 施設支配人および管理者へ文書にて調査協力の依頼を行ったうえで了解を得た.対象者に十分な説明を行い,同意を得たうえで行った.</p>

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