東京都A市における中学生に対する学習支援プログラムのセオリー評価と今後の課題-中学生との協働の試み-

DOI
  • 池田 晋平
    東京工科大学 医療保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻 社会福祉法人亀鶴会 公益事業推進室
  • 岩淵 百合子
    社会福祉法人亀鶴会 公益事業推進室
  • 中村 正人
    社会福祉法人亀鶴会 公益事業推進室
  • 芳賀 博
    佐久大学 看護学部看護学科

抄録

<p>【背景】</p><p> わが国では7人に1人の子供が相対的貧困であり,経済状況は子供の衣食住や学習環境に影響する.東京都A市の社会福祉法人 Bは,近隣のC中学校のヒアリングから「自宅に勉強できる環境がない生徒がいる」,「経済的理由で塾に通えない生徒がいる 」という実態を把握し,2018年に中学生を対象に自習室を立ち上げ,C中学校の年3回の考査期間 (1回8日程度)に大学生ボランティアによる学習支援を続けてきた.この学習支援プログラム (本事業)ではロジックモデルを構築し,今回参加型アクションリサーチ (PAR)として中学生に有効に機能しているのか見直しが必要と考えた.本研究の目的は,本事業に対しセオリー評価を実施し今後の課題を検討することである. </p><p>【方法】</p><p> 2022年11月に本事業を利用した中学生8名にアンケートを実施した.プログラム設計が目的を達成するために妥当かを問うセオリー評価の意図から,ロジックモデルの投入から直接成果をアンケート項目に設定した. </p><p>【結果】</p><p> 中学生7名から回答が得られた.投入の「本事業の要望 (自由記載)」では「参考書を増やして欲しい」という声が聞かれた.活動の「利用時間帯」,「利用料 (100円)」は「満足」7名であった.「勉強は捗ったか (複数回答)」の設問に,産出として 「他の子がいて集中できなかった」0名,「自分が勉強していると邪魔する子がいた」0名であった.直接成果として「とても捗った」7名,「家で一人で勉強するよりは良かった」1名であった.「大学生の関わり (学習サポート)」は「満足」6名, 「普通」1名であった. </p><p>【結論】</p><p> 活動から直接成果は,概ね肯定的な評価が得られた.現状の形で本事業を継続しつつ,投入の中学生の学習に役立つ書籍等を整備していきたい.今後もセオリー評価を実施し本事業が想定する成果が得られているか検証し,適宜ロジックモデルの修正とプログラムの見直しが必要である.またPARとして中学生や保護者などステークホルダーから生の声を聞き,協働にて本事業を見直したり発展させることが重要である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は東京工科大学の倫理委員会の承認を得ており (第E20HS-007号,2020年7月27日付),アンケートには,研究目的と個人情報保護の方法,協力は任意であることを記載し,書面・口頭で説明し同意を得た.同意が得られなくても不利益は生じず,同意の撤回ができる旨も十分説明した.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ