高齢者の嚥下機能低下のリスクに関連する要因

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 高齢者の嚥下障害は基礎疾患,内服等も影響し複合的である.これらの問題から誤嚥性肺炎を発症する高齢者も多く,死因の上位となっており現在の大きな懸念事項となっている.先行研究において,地域高齢者を対象とした報告が多く見られるが、サービス付き高齢者向け住宅 (以下,サ高住)入居者の報告は極めて少ない.そこで本研究では,サ高住入居者を対象とした高齢者の嚥下機能低下のリスクに関連要因を明らかにすることを目的に調査を実施したので報告する. </p><p>【方法】</p><p> 60歳以上の入居高齢者68名に対し,留置き調査を実施した.後日,3回唾液嚥下積算時間を2回測定し,短い方のデータを分析に用いた.各項目と地域高齢者誤嚥リスク評価指標: Dysphagia Risk Assessment for the Community-dwelling Elderly (以下,DRACE)の関連について,Mann-WhitneyのU検定(2群間比較),Kruskal-Wallis検定(3群間比較),Spearmanの相関係数を用いて2変量分析を行った.次いで,DRACEを従属変数とした一般線形モデルによる多変量解析にてDRACEの関連要因を検討した. </p><p>【結果】</p><p> 3回唾液嚥下積算時間の測定が実施できた44名,男性12名,女性32名,平均年齢84.6±5.3歳を分析対象とした.DRACE総得点の平均は2.3±2.1点であり4点以上の誤嚥リスクがある者は 12名 (27.3%)であった.3回唾液嚥下積算時間の平均は11.0± 4.9秒であった.DRACEと有意な関連がみられた項目は,お茶や汁物等でむせることがある (0.012,p<0.05),新型コロナウイルス感染症による生活の変化(0.022,p<0.05)であった.多変量解析の結果,DRACE高値には,新型コロナウイルス感染症による生活の変化,3回唾液嚥下積算時間,および,BMI,性別が有意に関連していた. </p><p>【結語】</p><p> BMIが低いこと,男性は誤嚥リスクを高めることが示唆された . 一方,新型コロナウイルス感染症による生活の変化が無いこと,嚥下機能が高いことは誤嚥リスクを低めていた.誤嚥リスクの予防には,嚥下機能の維持が欠かせないため,高齢者の嚥下機能の低下を予防する関わりが重要であることが示唆された . 今回,サ高住入居者の嚥下機能の実態の一部の調査であり,普遍性を確認する必要がある.また,サ高住での嚥下機能低下を予防する効果的なアプローチについて議論し実践することが今後の課題である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は,桜美林大学研究倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号19071). 施設支配人および管理者へ文書にて調査協力の依頼を行ったうえで了解を得た.対象者に十分な説明を行い,同意を得たうえで行った.</p>

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