呼気筋トレーニング(EMST)が口腔関連機能に及ぼす効果について

DOI
  • 伊藤 直子
    大東文化大学 スポーツ・健康科学部
  • 荒川 武士
    専門学校東京医療学院 理学療法学科 夜間部
  • 間藤 翔悟
    杏林大学 保健学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻 杏林大学 医学部耳鼻咽喉科学教室
  • 阿部 祐美子
    大東文化大学 スポーツ・健康科学部

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 高齢者の口腔機能の低下を予防する方策について多くの取り組みがなされているが、口腔関連筋群の積極的な向上を目的とした訓練方法はほとんど確立されていない。近年、EMSTが呼吸筋力や咳嗽能力を向上させるだけではなく、嚥下機能改善の効果も期待されている。そこで筆者は、嚥下・発声・呼吸が口腔から咽頭、喉頭までの上気道を共有し機能していることに着目し、呼気筋力の訓練を行うことにより嚥下や発声に必要な関連筋力を向上させる可能性があるのではないかと考え介入研究を実施している。 これまでに①通所リハビリ利用の高齢者②サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住)を対象に調査を実施してきた。今回は、 EMSTが主に在宅高齢者の口腔関連機能へ及ぼす効果についてこれまでの調査をもとに報告する。 </p><p>【方法】</p><p> ①通所リハ:介入群31名、対照群15名を対象 ②サ高住:介入群12名、対照群15名を対象 介入プログラムは、スレショルド (チェスト社製)を用いて最大呼気筋力の75%負荷のEMSTを1日3回5セットを毎日8週間の実施とした。対象者は自宅で自主的にトレーニングを行い、毎日の実施状況を記録カードへ記録した。口腔関連の機能評価として、嚥下機能 (3回唾液嚥下積算時間)、発声機能 (最大発声持続時間およびオーラル・ディアドコキネシス)、呼吸機能は最大呼気筋力 (PEmax)および最大吸気筋力 (PImax)を測定した。ベースライン時と介入8週間後の機能評価を測定し比較検討を行った。 </p><p>【結果】</p><p> 通所通所リハビリ利用の対象者においては、介入後に3回唾液嚥下積算時間、MPT、PEmaxの有意な介入の効果がみられた。サ高住利用者においては、3回唾液嚥下積算時間のみが有意な効果がみられた。 </p><p>【考察】</p><p> 通所利用者およびサ高住利用者の両者においてEMSTは高齢患者の口腔関連機能のうち嚥下機能を向上させることが示唆された。嚥下運動に要する通路は呼吸と発声の通路を一部共有しており、呼気時に舌骨筋群等の収縮を繰り返し行うことで嚥下時間の短縮につながったのではないかと考えられた。また、 EMSTによる発声時間の延長効果がみられたのは、トレーニングにより呼気の保持時間が増し発声の持続力を強化したことが考えられた。 サ高住利用者において嚥下以外の他の機能について効果が認められなかったのは、対象者の平均年齢が高齢であることやトレーニング実施率が通所利用者より低いことが影響していることが考えられた。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>対象者には、調査内容について文書及び口頭にて十分に説明を行い、桜美林大学研究倫理委員会の承認を得たのちに実施した (承認№19071)。</p>

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