高齢男性を地域活動へ促すための工夫と課題-ステークホルダーへの質的調査-

DOI
  • 池田 晋平
    東京工科大学 医療保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻 桜美林大学老年学総合研究所 連携研究員
  • 芳賀 博
    佐久大学 看護学部看護学科

抄録

<p>【はじめに】</p> <p> 健康日本21は「高齢者の社会参加の促進」を重点目標に,地域活動に取り組む高齢者の増加を推進しているが,高齢男性の参加率の低迷が課題となっている.先行研究では,地域活動の参加・継続に寄与する要因に着目されてきたが,高齢男性が地域活動と接点を持つために地域でどのようなきっかけ作りがされているか検討した報告は見当たらない.本研究の目的は,高齢男性を地域活動へ促すための工夫と課題について,ステークホルダーの質的調査から明らかにすることである. </p> <p>【方法】</p> <p> 研究参加者は,東京都大田区の日常生活圏域Aの地域包括支援 センター,社会福祉協議会および民生委員児童委員協議会,シニアクラブBおよびC町会の関係者5名であった.フォーカス・グループ・インタビューを実施し,1)高齢男性に地域活動へ参加してもらうための取り組み・工夫していること,2)課題と感じていることを自由に語ってもらった.質的記述的研究にて,逐語録から読み取れる意味を最小単位で区切りコードを付与し,類似するコードを集約しサブカテゴリを生成した.さらにサブカテゴリ間の類似性,相違性,関連性を吟味しカテゴリを生成した. </p> <p>【結果】</p> <p> 高齢男性を地域活動へ促すための工夫と課題として7つのカテゴリが生成され,1)趣向を凝らした誘いや声掛け,2)活動内容の見直しと場づくりの2つに分類された.1)は【様々な立場の人からの誘い】,【参加の一歩を後押しする声掛け】,【個別性に応じた声掛け】,【諦めない根気強い声掛け】の4つで構成され,2)は【男性が好む活動への方向転換】,【男性が入りやすい組織の雰囲気】,【住民が交流や活動できる場の充足】の3つで構成された. </p> <p>【結論】</p> <p> 高齢男性が地域活動に参加するうえで,リハビリテーション専 門職は健康面への影響を強調した声掛けや,高齢男性の選好や知識・技能に応じた活動を提案する役割が担えると考えられた.また既存の地域活動をより男性が興味を持ちやすい内容へ発展させるアイデアやサポートを提供し,ステークホルダーと共に企画・運営していくことが重要と考えられた.加えて,公共施設などハード面の整備の必要性も示唆され,その解決には自治体行政の都市計画分野の協働が不可欠である. </p> <p>【倫理的配慮】</p> <p>東京工科大学の倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号:第E19HS‐028号,2020年3月2日付).</p>

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