地域在住高齢者の呼吸サルコペニアに対する口腔機能を含めた評価

DOI
  • 山口 育子
    東京医療学院大学 保健医療学部
  • 内田 学
    東京医療学院大学 保健医療学部
  • 岡崎 英治
    医療法人不動会なかむらファミリークリニック リハビリテーション科
  • 渡邊 朋子
    医療法人不動会なかむらファミリークリニック リハビリテーション科
  • 村越 春奈
    医療法人不動会なかむらファミリークリニック リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>呼吸サルコペニアの診断には、全身サルコ ペニア、呼吸筋量、呼吸筋力、呼吸機能が用いられる。地域高齢者において、呼吸筋量の測定は困難だが呼吸筋力の低下を早い段階で検出し予防的介入を行うことは重要となる。我々は地域高齢者を対象に呼吸筋トレーニングの介入を行い、呼吸筋力、運動耐容能が増加することを報告した。しかし呼吸の測定やトレーニングが口腔を介すため、強い吸気呼気にて口唇から空気が漏れる、頬がふくらむなどの現象を確認している。高齢者の口腔機能低下は周知のことであり、口腔機能の影響を明らかにした上で呼吸筋の測定や介入を行う必要があると考える。本研究は、高齢者の呼吸機能、呼吸筋力と口腔機能の関連を明らかにすることを目的とする。</p><p>【方法】</p><p>対象はデイケアに通う高齢者52名とした。対象者の体組成、口腔機能 (口唇閉鎖力、舌圧、頬圧)、呼吸機能 (肺活量 :VC、最大呼気流速:PEF)、呼吸筋力 (最大吸気圧:MIP、最大呼気圧:MEP)、運動機能 (握力、膝伸展筋力、CS30)を測定した。各指標の関連性を相関分析にて検討したのち、本研究の目的である呼吸機能、呼吸筋力に対する口腔機能の影響を検討するため、VC、MIP、MEP、PEFを従属変数、それ以外の呼吸機能と口腔機能を独立変数として重回帰分析を行った。</p><p>【結果】</p><p>相関分析の結果、運動機能、呼吸機能、口腔機能は関連することが確認された。重回帰分析の結果、VCではMEP (β =0.58)、MIPではMEP (β=0.67)と口唇閉鎖力 (β=0.20)、 MEPではMIP (β=0.54)、頬圧 (β=0.31)、VC (β=0.26)、 PEFではMEP (β=0.72)が有意に関連する変数として抽出された。</p><p>【考察】</p><p>全身の運動機能、呼吸筋力、口腔機能は関連しており、それらの虚弱状態が併存する可能性については既存の報告と一 致した。また、吸気筋には呼気筋、呼気筋には吸気筋が影響すると共に、口唇閉鎖力と頬圧も影響した。呼吸筋力の測定には強く急速な吸気呼気を要し、タイミングに合わせた口輪筋による口唇閉鎖と口腔内の形状を保つ頬筋群の協調性と筋力が必要と考える。呼吸筋測定の前段階として口腔機能を把握すること、さらに今後はカットオフ値の検討も必要と考える。</p><p>【結論】</p><p>呼吸筋力には口唇閉鎖力と頬圧が影響することが示された。高齢者の呼吸機能や呼吸筋力を測定する際には口腔機能を確認したうえで測定値の解釈には注意を要することが示唆された。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は東京医療学院大学倫理審査委員会の承認 (承認番号:21-25H)を得て実施した。事前に研究の趣旨や目的を十分に説明し書面にて同意を得た者を対象とし、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分に行った。</p>

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