文化社会学のおよそ40年をふりかえって

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タイトル別名
  • Looking Back on About 40 Years of “Sociology of Culture”

抄録

<p>1980年代,社会学で〈文化の研究〉に従事することにはさまざまな制約があった.大学の正式な授業では学ぶ機会がすくなく,学部をこえた勉強会や学外団体がその受け皿になっていた.本稿では,京都大学人類学研究会(通称「近衛ロンド」)と民間の現代風俗研究会を紹介しつつ,それらの活動が当時の〈文化の研究〉を支えていたことを示す.また1990年代以降にカルチュラル・スタディーズがひろがったことや,少子化のすすむなかで大学が受験生獲得策として〈文化の研究〉をセールス・ポイントにしたこと,海外の日本研究ブームなどによって,文化を学ぶこと,研究することが大学のなかに制度化されていった経緯を跡づける.学術には〈流行りすたり〉があって社会の変化から独立しておらず,大学もその〈流行りすたり〉と無縁ではいられない.</p> <p>今日,〈文化の研究〉を志す者は,かつてにくらべて自由に研究テーマを設定することができ,成果発表の機会も拡大した.これらは,大学あるいは社会学が〈文化の研究〉を歓迎し許容するようになった,その変化の恩恵といえよう.いっぽうで,大学のカリキュラムにとりこまれたことによって〈文化の研究〉が画一化する傾向も認められ,希望どおりの研究に従事しながら専任職を得られない人たちが増加するという問題も生じた.</p> <p>本稿は,こういった学術の変化の過程を同時代で経験した者として,個人史と重ねあわせるかたちで呈示する試みである.</p>

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