相分離するCO<sub>2 </sub>濃縮オルガネラとしての緑藻ピレノイドの理解

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タイトル別名
  • Understanding of green algal pyrenoid as a phase-separating and CO<sub>2</sub>-concentrating organelle

抄録

<p>ピレノイドは,藻類やツノゴケの葉緑体に存在する小器官であり,光学顕微鏡でも明確に観察することができる.ピレノイドは,CO2 固定酵素RubisCOが集積することで形作られ,水圏における効率的なCO2 固定反応において中心的な役割を担う.ピレノイド形成の分子メカニズムやCO2 濃縮機構との関連については,モデル緑藻クラミドモナスを用いた研究で理解が大きく進んだ.クラミドモナスのピレノイドは,RubisCOと天然変性領域を持つ多価のRubisCO結合タンパク質との液-液相分離により形成されるが,この考え方は,他の藻類種のピレノイド形成にも適用されると議論されている.本稿では,主にクラミドモナスのピレノイドの構造とCO2 濃縮機構について,筆者の成果を含めた最新の研究例を紹介したい.その上で,ピレノイドの機能的な構成要素である(1)ピレノイドマトリックス,(2)デンプン鞘とその周辺タンパク質,(3)ピレノイドチューブの構造が,CO2 をRubisCO周囲に濃縮する目的を達成するために,藻類が系統を超えて収斂進化により獲得した普遍的な構造であるという視座を提供したい.ピレノイドの構造,形成,制御の背後にある原理を理解することは,細胞生物学的に重要な非膜オルガネラの基本的な理解だけでなく,将来的に光合成能と収量を高めるために陸上植物にピレノイドを導入するための分子基盤を提供するだろう.</p>

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参考文献 (24)*注記

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