地学教科書における用語「カリ長石」の変遷とその課題

書誌事項

タイトル別名
  • A Proposal to Change “Potassium Feldspar” to “Alkali Feldspar” in Japanese Earth Science Textbooks

抄録

<p>長石は珪酸塩鉱物(類)・テクト珪酸塩鉱物(科)の複数の固溶体系列を含む族名(アルミノケイ酸塩)である。カリ長石-ナトリウム長石(-カルシウム長石)間の固溶体系列名がアルカリ長石であり,基本的に「カリ長石」はこの固溶体系列の端成分を意味する。国際地質科学連合(IUGS)が提唱する火成岩分類においては,アルカリ長石のみが使用されており,「カリ長石」は使用されていない。しかし,日本では現行の高等学校用地学教科書において,カリ長石-曹長石の固溶体名が「カリ長石」であるかのような誤解を与えており,これらの用語について現今の知見を踏まえた十分な検討がなされていない。今回,そのような現状を明らかにする基礎的な作業の一つとして,明治から平成時代の教科書を対象に「カリ長石(または正長石)」の用語の扱いの変遷を明らかにすることを試みた。その結果,「カリ長石(または正長石)」は,明治時代の前期から現在まで変遷を経ながらも絶えず用いられ続けており,平成時代(1989年)以降に「カリ長石」がほぼ単独で用いられていることが判明した。高等学校用地学教科書においては,平成初期以降に固溶体の概念が記述されているにもかかわらず,固溶体の端成分を示す「カリ長石」が固溶体系列名「アルカリ長石」の代名詞であるかのような誤解を与える使われ方が続いていることや,固溶体系列名である斜長石と同等の扱いでアルカリ長石ではなく「カリ長石」と記述されていることが明らかになった。教科書における「カリ長石」に代わる「アルカリ長石」用語の使用の検討が迫られている。</p>

収録刊行物

  • 理科教育学研究

    理科教育学研究 64 (3), 365-373, 2024-03-31

    一般社団法人 日本理科教育学会

参考文献 (1)*注記

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