夢を諦める契機

書誌事項

タイトル別名
  • Giving Up on a Dream:
  • Focusing on Rock Musicians’Experience of Moving Away from the Standard Life Course
  • ――標準的ライフコースから離反するバンドマンの経験に着目して――

抄録

<p> 本稿の目的は,「音楽で成功する」といった夢を掲げて活動するロック系バンドのミュージシャン(以下,バンドマン)を事例に,標準的ライフコースから積極的に離反する若者の経験を明らかにすることである。<br> 学卒後すぐに正規就職し,適齢期での結婚を経て,自らの家庭を築くという標準的ライフコースの規範は,ジェンダーによる差異を伴いながら現在でも多くの若者を捉えている。本稿では,その規範から積極的に離反して,自らの将来の夢を軸に夢追いライフコースを形成するバンドマンの実態を明らかにする。得られた知見は次の2点である。<br> 第1に,彼らは標準的ライフコース規範を批判しつつも,それが「普遍的」で「一般的」な生き方であることを認めていた。ゆえに,その多くが夢追いアスピレーションを反動的に加熱させて,夢を追い続けていた。しかし第2に,夢追いへと邁進することが身体的・精神的問題を引き起こして夢が追えなくなったり,年齢を重ねて将来への不安が増大し,標準的ライフコースの規範に抗えなくなって夢を諦めたりする者が確認された。<br> 以上の知見は,後期近代の要請に従って自らの人生を形成し続けることの困難性を示している。また,標準的ライフコースの規範は,それから離反しようとする若者にとっては抑圧的に作用するが,翻って夢を諦めた後には,セカンドキャリアの重要な選択肢の1つとなる点で両義的な性質を有しているといえる。</p>

収録刊行物

参考文献 (5)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ