待遇コミュニケーションにおける「丁寧さ」に関する考察
-
- 蒲谷 宏
- 早稲田大学
-
- アドゥアヨムアヘゴ 希佳子
- 宝塚大学
-
- 任 ジェヒ
- 立教大学
-
- 徳間 晴美
- 明治学院大学
抄録
<p>本稿は、待遇コミュニケーション、および、それに関する教育・研究における「丁寧さ」とは何か、「丁寧さ」をどのように捉えればよいのかについて考察したものである。考察のための方法としては、これまでに行ってきた議論や先行研究、辞典・事典類やコーパスなどの調査結果を踏まえつつ、その最終段階で「KJ法」を援用した。</p><p>まず、考察の前提として、内省とコーパスを用いる利点と問題点について述べ、次に、</p><p>「丁寧さ」の捉え方の留意点と段階性について考察した。実際の待遇コミュニケーションにおける「丁寧さ」とそれを個々のコミュニケーション主体がメタ的に捉えることとは、関連はするが、それらは別の段階にあるものとして捉える必要がある。</p><p>待遇コミュニケーションにおける「丁寧さ」を考えると、その基本的な枠組みとなる、【前提】―コミュニケーション主体―【場面】―意識―内容―形式のすべてにわたって関わるものであることがわかる。「丁寧さ」は、待遇コミュニケーションの枠組みとなる諸要素と個別に、そしてコミュニケーション行為全体と関わるものであり、そのことが、「丁寧さ」の持つ多様性と多重性として複雑に絡んでくるのではないかと考えられる。</p><p>「丁寧さ」は、表面的、形式的な言葉遣いを丁寧にすることが問題なのではなく、その根底にある考え方や姿勢が重要なのだといえる。その点を抜きにして、表面的、形式的な言葉遣いやコミュニケーションにおける「丁寧さ」だけを扱うことには意味がないだろう。</p><p>また、「丁寧さ」は、絶対的・固定的に捉えられるものではなく、相対的・動態的なものであり、それぞれのコミュニケーションにおいて、常に変容するものだと考えられる。</p><p>待遇コミュニケーション研究において「丁寧さ」を明らかにしようとするのは、それが待遇コミュニケーションのすべてのあり方に関連することだと考えるからである。ただし、教育においては、適切な「丁寧さ」を学ぶことは重要であるとしても、それは、他の学びと同様、個々のコミュニケーション主体の主体的なものでなくてはならないだろう。</p><p>待遇コミュニケーションの実践、教育、研究において、「丁寧さ」というものを具体的にどのように活かしていくのかについては、今後の重要な検討課題になるといえる。</p>
収録刊行物
-
- 待遇コミュニケーション研究
-
待遇コミュニケーション研究 21 (0), 82-100, 2024-04-01
待遇コミュニケーション学会
- Tweet
キーワード
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390581148795527552
-
- ISSN
- 24344680
- 13488481
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可