タイ国中央部チャオプラヤ平野に分布するペルム系層状チャートの地質学的帰属

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  • Geological origin of the Permian bedded chert succession distributed in Central Plain of Thailand

抄録

<p>タイ国の地体構造区分はタイ国北部で明瞭な一方,タイ中央部では十分に理解されていない.タイ国中央のチャオプラヤ平野は広く第四紀堆積物で覆われており,中・古生界の露出は散在的である.よって層序や地質年代のデータが不十分で,地体構造区分や地質学的起源について十分な議論がなされていない.本発表では,タイ中央部チャオプラヤ平野に散在的に露出する層状チャートの地質学的帰属について検討した結果を報告する. 調査地域は平野北部のThung Saliam(以下TS)地域と平野中央部のNakhorn Sawan~Uthai Thani(以下NS-UT)地域である. 両地域で約 20のチャートの露頭で調査を行った.ほとんどのチャートは結晶質で接触変成作用と思われる変成作用を受けている.TS のチャートは層状・赤色で,層序関係は不明であるが,周囲に凝灰岩や石灰岩が露出する.NS-UTのチャートは多様な色調(赤・黒・灰色・乳白色)を呈し, へき開の発達した頁岩と砂岩を伴って露出する.これらのチャートは,非常に細かい粘土鉱物と微晶質石英からなる基質に放散虫殻や海綿骨針を含み,粗粒の陸源物質を含まないことから,典型的な遠洋性チャートに分類される. Sashida and Nakornsuri (1999) はTS チャートから Pseudoalbaillella simplexRuzencevispongus sp. などを報告し,その年代を Wolfcampian とした.一方Saesaengseerung et al. (2007) はNS-UT チャートからParafollicucullinoides loemntarius Assemblage (Artinskian)と Follicucullus scholasticus Assemblage (Capitanian-Wuchiapingian)の放散虫を報告している. 放散虫によって年代が特定された 3 つのセクションについて全岩化学分析を行った.コンドライトで規格化されたREEパターンにおいて,TS チャートは Ce の負異常を示し,NS-UT チャートはLREE が右下がりのパターンを示す.これらの地質年代とREEパターンは,タイ南東部Sa Keo地域のものと類似する. TS および NS-UT 地域のペルム系チャートは,弱い変成作用を受けて劈開面の発達する細粒砕屑岩と凝灰岩の薄層が伴うことが多い.チャート自体の厚さも各露頭で数mから10~20mと比較的薄く,基本的に南北走向を呈する.Ueno et al. (2012) によって指摘されているように両地域の岩相や産状は類似しており,地質学的に対比が可能と考えられる. Ueno et al., (2012) はタイ国中央部を西から東に,Sibumasu地塊・Sukhothai帯・Indochina地塊の 3 つの地質単位に区分している.タイ国に分布する中・古生界チャートについては,デボン紀から三畳紀の年代が報告されている古海洋テチス起源のチャートがよく知られている.しかしタイ国中央部チャオプラヤ平野でペルム紀以外のチャートはこれまでに報告されていない.一方でタイ国北東部や南東部ではペルム系チャートを含む地質単位として,Sa Kaeo-Chanthaburi (S-C) 縫合線やNan-Uttaradit(N-U) 縫合線が知られている.これらの縫合線はIndochina地塊とSukhothai島弧の間に広がっていた背弧海盆の閉塞域とされている.中央部のペルム系チャートがUeno et al. (2012)のSukhothai帯の東部とIndochina地塊の縁辺近くに分布することは,これらのペルム系チャートがS-C縫合線のペルム系チャートに対比可能なことを示唆する.これらの地質学的証拠に加えて中央部ペルム系チャートのREE パターンなどの地球化学的特徴は,Sa Kaeo地域のものに類似している.これらの観察事実はタイ国中央部に分布するペルム系チャートが背弧盆地の閉塞域であるS-C縫合線やN-U縫合線のペルム系チャートを起源としていることを示唆する. 文献 Sashida K. and Nakornsuri N. (1999) Proceedings of the International Conference on Stratigraphy and Tectonic Evolution of SE Asia and the South Pacific. DMR, Bangkok, 101–108; Saesaengseerung D. et al. (2007) Proceedings of the International Conference on Geology of Thailand, DMR, Bangkok, 72; Ueno et al. (2012) Journal of AES, 61, 33–50.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581235165395200
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_433
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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