能登半島北西部大福寺の変成溶結凝灰岩のジルコンU-Pb年代:飛騨帯新期花崗岩類および下部ジュラ系来馬層群との関係

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  • Zircon U-Pb age and metamorphosed welded tuff in Daifukuji, northwest of the Noto Peninsula, central Japan: Its relationship with the Younger Hida Granites and the Lower Jurassic Kuruma Group.

抄録

<p>能登半島には第三系と第四系が広く分布しており、その基盤として飛騨帯の片麻岩類や花崗岩類が小規模に分布する。本研究では、金山ほか(1999)によって報告された能登半島北西部、石川県志賀町(旧町名:富来町)北東に産する変成溶結凝灰岩(黒雲母K-Ar年代178± 5 Ma、柴田ほか, 1984)からジルコンを分離し、U-Pb年代測定を実施した。溶結凝灰岩中のジルコンからは244± 2.6 Maと188± 1.6Maの2つの年代グループが得られた。ジルコンの形態と内部構造から、188Maの新期の年代は、溶結凝灰岩の形成年代を示すと考えられる。古期の年代は、溶結凝灰岩のマグマの起源物質または噴出時に取り込んだ周辺岩石由来の年代を示すと考えられる。古期の年代が、溶結凝灰岩のマグマの起源物質とした場合、変成結凝灰岩は、188Maに、244Maの年代を示す岩石からマグマが発生・噴出し溶結凝灰岩となり、その後、178Maの冷却年代を持つマグマ活動(花崗岩類)による接触変成作用を被ったと考えられる。一方、古期の年代が噴出時に取り込んだ周辺岩石由来とする場合、溶結凝灰岩の噴出時に244Maの年代を示す岩石が広く分布していたことを示す。 本研究で得られた古期年代は飛騨古期花崗岩類の年代(竹内ほか、2021)と一致し、また溶結凝灰岩の形成年代は飛騨新期花崗岩類の年代と一致する。このことから、溶結凝灰岩は飛騨新期花崗岩類の火成活動で形成されたと考えられ、飛騨新期花崗岩類をもたらしたマグマ活動は地表にも噴出していたことが明らかになった。この可能性に関しては、金山ほか(1999)でジュラ紀火山―深成複合岩体の存在を既に議論している。 また変成溶結凝灰岩の形成年代は、飛騨外縁帯の岩石を不整合に覆う来馬層群の年代(竹内ほか,2017)と同じである。来馬層群は酸性火山灰層を挟む。この溶結凝灰岩を形成した火山噴火は、飛騨帯と飛騨外縁帯を覆ったものと考えられる。つまり、飛騨外縁帯の岩石は飛騨新期花崗岩類の活動時期までに飛騨帯の近傍に位置していたことになる。 過去の研究において、ジュラ紀の付加体中に認められる堆積性ジルコンの年代で得られる190-160Maまたは200-150Maのグループについて、その起源となった岩石は日本列島から既に失われたと解釈されている。今回得られた飛騨帯の変成溶結凝灰岩の年代は、飛騨帯は前期ジュラ紀には陸化し、その上に溶結凝灰岩が重なり、さらにその深部には新期飛騨花崗岩が貫入していたことを示唆する。この溶結凝灰岩を形成した火成活動は、火山灰中のジルコン粒子として、または砕屑性ジルコン粒子として、飛騨外縁帯の前期ジュラ紀の堆積岩の来馬層群中にジルコンを供給したと考えられる。さらにジュラ紀付加体中、白亜紀付加体中にも砕屑性ジルコンとして供給されたと考えられる。本発表では、これらについて報告すると共に、ジルコンのHf同位体の示す飛騨帯古期・新期マグマの特徴について議論をする。 引用文献金山憲勇・廣井美邦・柴田賢.(1999) 能登半島北西部のジュラ紀火山―深成複合岩体, 地質学論集, 53, 299-308. 柴田賢・内海茂・宇都浩三・中川忠夫(1984)K-Ar年代測定結果-2-地質調査所未公表資料-. 地質調査所月報, 35, 331-340.竹内誠・常盤哲也・熊崎直樹・横田秀晴・山本鋼志. (2017) ジルコンU-Pb年代からみた下部ジュラ系来馬層群の堆積年代. 地質学雑誌, 123, 335-350.竹内誠・カスイ・志村侑亮.(2021)20万分の1地質図「富山」の東部地域の深成岩類のジルコンU-Pb年代. 地質調査研究報告, 72, 41-64.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581235165441024
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_55
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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