センメルヴェイス医学史博物館におけるヴィーナスの展示経緯とその歴史的背景

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  • センメルヴェイス イガクシ ハクブツカン ニオケル ヴィーナス ノ テンジ ケイイ ト ソノ レキシテキ ハイケイ

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抄録

本稿の目的は, ブダペストのセンメルヴェイス医学史博物館に展示されている解剖学用ヴィーナスの展示経緯と歴史的背景を明らかにすることである. 解剖学用ヴィーナスを含む医学模型は, 1700年代後半にフィレンツェで作られ, フィレンツェからウィーンへ, ウィーンからペストに輸送された. ウィーンで妊娠している蝋人形が先に確保され, ペストには妊娠していない蝋人形が届けられた. 後者のヴィーナスは女性のリンパ系を実証するものであった. 展示品の納品と受領は1967年におこなわれ, 1972年よりは前に展示が開始された. 調査の結果, ヴィーナスの展示開始時期と社会主義の関係はないことがわかったが, このヴィーナスの展示を可能にしたのは博物館という装置によってであり, その博物館の創設においては, 社会主義時代の文化政策担当機関からのサポートがあったことがわかった. このヴィーナスは, 修復を経て保存されており, 2018年には, ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されたLife Like展にも貸し出された. ヴィーナスの展示経緯や文脈について考察した本稿は, 女性の身体表象, 医学と芸術の関係に関する示唆を与えるものである.

This paper aims to clarify the exhibition process of the Anatomical Venus on display at Budapest’s Semmelweis Museum of Medical History and its historical background. Wax models, including the Anatomical Venus, were made in Florence in the late 1700s, after which they were transported from Florence to Vienna and from Vienna to Pest. The pregnant Anatomical Venus was selected first in Vienna, and another Anatomical Venus, which did not depict pregnancy, was delivered to Pest. The latter Anatomical Venus was designed to demonstrate the female lymphatic system. Delivery and receipt of the exhibits took place in 1967, and their exhibition began prior to 1972. ......

収録刊行物

  • 季刊経済研究

    季刊経済研究 42 (4), 47-62, 2024-03-29

    大阪公立大学経済研究会

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