スラックラインにみる遊戯的特性とそれを基調とする実践における学びの生成

書誌事項

タイトル別名
  • Generation of Learning in Practice Based on the Playful Characteristics of Slackline

この論文をさがす

抄録

本研究では,遊びの視点からスラックラインの特性を示し,それを基調とする実践における学びの生成のありようを示すことを目的とした.その結果は以下のようにまとめられる.1)スラックラインは,ラインの上で行う者がとるであろう動きによって,行う者がラインから落下するか,しないかの状況の下で,ラインが上下左右に揺れ動くあてどのないさまとしての遊動が生成・現出する.そして,それは,ラインの張られる環境,その長さ,あるいは張りの度合いなど様々な張り方の条件としての遊隙の中に現れる.2)スラックラインは,ライン上という限定枠において,行う者が落下しないように身体のバランスをとりつづけることが<できるかどうか>の世界に浸っている様態において面白さが生まれ,静止動作や移動動作,あるいはトリックという色々なパフォーマンスに挑戦することにより,スラックラインというスポーツに引き込まれる.3)体育の授業において,スラックラインは,子どもたちが<バランスをとることができるかどうか>という遊びの文脈の中で,一人ひとりの独特な欲求に刺激を与えられ,面白さに触れていく中で,教育的に価値あることがらをも学び経験していく可能性が拓かれる.スラックラインの遊戯的特性を基調とする体育の実践では,スラックラインにおける< 〜できるかどうか>の世界に入ること,スラックラインに遊ぶこと(その運動特有の面白さに触れること)によって,スポーツへの意味や価値に向けた学びへの扉が開かれ,さらに教育的・人間形成的に重要なことがらをも学ばれる可能性が拓かれる.これが,遊びの力,すなわち,遊ぶことによってこそ,子どもたちが教育的・人間形成的に重要なことをも学んでいく(経験を積み重ねていく)学びの広がりと深まりのありようである.体育の授業における学びを考える上で,スラックラインを行うことが,この運動に遊ぶことを軸とした学びの広がりと深まりとして構想され実践されることによって,豊かに生きること自体を学ぶこと,豊かに生きるために学ぶこと,そして,豊かに生きるとはどういうことかを学ぶことへとつながっていくという理解が重要である.

収録刊行物

  • 釧路論集

    釧路論集 55 49-56, 2024-02-25

    北海道教育大学釧路校

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ