数値表層モデルおよびオルソ画像を用いた救援活動拠点の立地特性の分析

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  • Analysis of the characteristics of the location of the relief operation bases using digital surface models and ortho-images

抄録

<p>1.はじめに</p><p> 2024年1月1日に発生した能登半島地震の状況が示すように,広域災害発生時における救援活動を迅速かつ円滑に行うためには,被害状況把握に加えて,地理的な戦略が重要である.救援物資輸送やそのルートの脆弱性に関して,佐々木ほか(2020)は現地調査に基づき南海トラフ地震の場合,四国や紀伊半島の各地で鉄道や道路が寸断されることを想定した戦略が必要であることを報告した.一方,スポット的な存在であっても,事前に避難所となり得る場所が事前に認知され,具体的な特性が把握されていることは,発災後の救援物資輸送計画の策定に役立つと考える.そこで,本研究では救援活動を行う上での既存の施設の利用という側面に焦点を当て,学校や寺院,集会所,駅舎などの地域の避難者が集まると想定され施設の立地特性を明らかにすることを目的とした.</p><p>2.研究方法</p><p> まず,本研究では紀伊半島南部を対象として数値標高モデル(50mDEM),数値表層モデル(DSM)とオルソ画像を作成した.DEMは国土基本情報,DSMとオルソ画像は国土地理院撮影の空中写真からフォトグラメトリにより作成した.次に,これらのデータを元に,被災想定地域(集落)の地形特性および学校や駅舎等の施設の配置・形状を求めた.集落の地形特性としては,楮原ほか(2022)で紹介したCI値を用いた.</p><p>3.救援活動拠点および鉄道施設の立地特性</p><p> ここでは,被害想定地域(集落)の地形特性と駅舎の結果について述べる.対象地域におけるJR紀勢線の駅は和深,田子,田並,紀伊有田,串本,紀伊姫,古座,紀伊田原,紀伊浦神の9つであり,串本駅を除く駅舎は概ね0.5〜1.0 km2の広がりをもつ集落ポリゴン内に位置していた.すなわち,駅舎は各集落において歩いて負担のない距離に位置する施設であった.集落の地形特性は田子駅周辺を除き,CI< 0または≒0となっている.CI値がより低い那智浦神や紀伊田原は周囲よりも落ち込む形状の谷底平野,CI値が -5~0の和深や串本などは扇状地や浜堤等の発達するやや幅広い谷底平野に立地している.南海トラフ地震時には紀伊半島沿岸に押し寄せる津波によって鉄道が寸断されることが想定されるものの,和深駅や串本駅は地形特性からみて,津波の威力が減衰しやすい場所に立地していると評価される.ただし,津波被害想定の状況は両地域で異なっており,駅舎が救援活動拠点となるか否かは,災害現象の程度および施設の現状による.そのため,建物の嵩上げや強固な構造物とする等の対策が必要な場合も想定される.しかしながら,以上のような検討を踏まえれば,数多くある施設の中でも,より拠点とするべき施設を選定することに役立つと考えられる.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390581334682872320
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_100
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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